わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

廃屋が 島の寂しさ 漂わせ (広島県豊田郡大崎上島 水彩スケッチ)

2015年3月

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バススケッチで大崎上島(おおさきかみじま)に来ました。この島は広島県と四国の愛媛県を結ぶしまなみ海道が通っている生口島大三島伯方島の島々の丁度西側にある島です。この辺りでは比較的大きな島ですが、本土と橋で結ばれていない島で、離島の指定を受けているそうです。昔から造船業が盛んな島です。また、みかんやブルーベリーの生産でも有名だそうです。
 
高速道路で竹原港まで来て、そこからフェリーに乗り換えて約30分で島に着きました。そして、島の港から島の東にある天満港の近くの木江という町まで来て、そこでバスを降りて古い路地に入りました。人通りはほとんどありません。ここを描く際には、せっかく瀬戸内に浮かぶ島に来たのだから、古い家並みだけでなく是非とも瀬戸内海と広い空を入れて描きたいと思っていました。ここの町並みが面白いのは、2階建てに混じって3階建の古い木造の家屋が、狭い通りに面して押し合うように立っていることです。大崎上島の現在の行政の中心は、島の北西部の大西港周辺ですが、そのあたりは近年干拓によって地面を広げて作った土地で、昔ながらの島の風情は山が海岸に迫って平地が少ない島の東部や南部に残っているようです。土地が狭いので、その昔、木造の3階建の建物などを建てたのでしょう。現在の建築法ではこれらの高層木造建築は違法かもしれません。

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この木江地区の古い町並みに立ち並ぶ家屋の古さは、ちょっとあまり目にしない古さです。うち捨てられて廃屋になった家も幾つかありました。家に表札は掛かっているのですが、窓から見える白いカーテンがボロボロになっていたり、屋根の下の雨トイが外れたままだったり、壁や屋根にツタや雑草がぼうぼう生えていたりと、人が住んでいる気配のない家が沢山ありました。昔は、この辺りは恐らく瀬戸内を行き交う船の停泊港や漁港として町が大層なにぎわいを見せ、多くの人が住み、訪れる人も多かったと思われます。多分その名残がこの建築物群なのでしょう。

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この木造家屋群は余り管理が行き届いていないようなので、もし地震津波、それに火災が発生するとひとたまりも無く壊滅、または焼失するのではないかと心配になります。貴重な建築物なので、なんとか行政が保護に力を入れてもらいたいものです。

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今日は、このふるい街並みを高い所から俯瞰して描くことにしました。古い町の通りから少し入った所に神社があったので、そこまで登って、町の屋根と瀬戸内海と遠くの山々を描きました。スケッチブックはラングトンのF6見開きです。ただし、見開きと言っても、今回は縦に見開きです。滞在時間が全部で3時間しかなく、場所を決めるのに30分かかったので、正味のスケッチ時間は2時間半でした。大急ぎでのスケッチとなったため、色があまり乗せられませんでしたが、人気のない町の様子は表現できたのではないかと思います。崩れそうな家々は、水彩画でもやはり寂しさを漂わせて描くのがいいと思います。無理に明るくきれいに描くと、その場の雰囲気を正確に伝えていないことになるので、私としてはそれは避けたいと思いました。あるがままに描く。しかし、愛情をもってやさしく描く。自分がここしかないと思って描くのだから、これが大事だと思います。

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出来上がりの絵には遠くに明るく穏やかな瀬戸内海と山々が描けました。春の瀬戸内海の明るさと、この町の寂しさが対照的です。島の北部はまた違った雰囲気なのかもしれません。もっとゆっくり何日も滞在すると、島の本当の良さがわかってくると思います。
 
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