わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

麦青し 遍路の道を ひた歩く (香川県善通寺市 善通寺 出釈迦寺(しゅっしゃかじ) 曼荼羅寺(まんだらじ) 甲山寺(こうやまじ) 金倉寺(こんぞうじ))

2018年4月

 
香川のウオーキング大会に参加して、讃岐(さぬき)路を歩きました。1週間ほど前に行った徳島県坂東の第一番札所霊山寺(りょうぜんじ)参りが、私にとってはえらく刺激になり、遍路(へんろ)道を一部でもいいからまた歩きたくなりました。インターネットを見ていたら、4月の第一土曜日とそれにつづく日曜日に香川県でツーデーウオークのイベントが開かれ、その実行委員会の主催で、3日目の月曜日に「せっかくウオーク」と銘打って短距離11kmウオーキング参加者を募集していました。善通寺周辺の5寺を巡るコースです。これはいいと迷わず参加することにしました。青春18きっぷの最後の5枚目の切符をこれに使えます。早朝にJR岡山駅からJR瀬戸大橋線予讃線を乗り継いで、JR善通寺駅に来ました。

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今日の参加者は30名ほど。殆どの人が3日連続で歩いていて、初日と二日目に25 km35 kmのコースを歩いた人もいます。今日はやや肌寒い天気ですが、晴れ。歩くにはとても良いコンディションです。8:40にJR善通寺駅前スタートしました。
 
まず四国八十八ヵ所霊場の第75番札所善通寺へ。今日最初にすれ違ったお遍路さんは若い外国人の男女3人。「おはようございます!」ときれいな日本語でさわやかな笑顔でした。善通寺は、弘法大師空海の生誕地。唐から帰国した空海が、真言宗を広めるために自分の生家跡に唐の寺をモデルに寺を建てたと言われています。ここに来るのは約20年ぶり2度目です。前に来た時には宝物館で空海の書などの展示を見せてもらいました。とても境内が広い立派なお寺です。お寺というのは時代が変わっても全体の様子があまり大きく変わりません。その意味では建築を含めて古い伝統文化を残す大事な場所になっています。

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私が今日のコースで一番気に入った風景は、善通寺から五智院を通って筆ノ山という標高295メートルの低い山の裾を巻いて五里の里という自然公園に至る道沿いの風景です。筆ノ山を覆う自然林が、ヤマザクラのピンク、新緑の黄緑、黄色、緑に覆われて見事な美しさ。その山のふもとに点在する民家と香川の名産のビワを栽培する果樹園、そしてあたりに広がる麦畑と春風にそよぐ青い麦の穂。わあ~絵になる!と思いましたが、皆さんドンドン前に歩いていかれるので、立ち止まらずついて行くしかありません。

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五里の里でトイレ休憩して、それから次に第73番札所出釈迦寺(しゅっしゃかじ)。ここは絵になりそうなお寺です。特に背景の我拝師山(がはいしやま)がいい。ここも描きたい!と思いました。普通お寺ではあまりスケッチの気分が出ないのですが、ここはとてもいい雰囲気です。
 
そして第72番札所曼荼羅寺(まんだらじ)。かつては空海が手植えをしたと言われる「不老の松」がありましたが、この松も老いには勝てず枯れてしまいました。その松の大木の幹に彫った「笠松大師」像がまつられています。
 
次は第74番札所甲山寺(こうやまじ)。岩窟の中にお堂があります。それから田園の中の道を歩いて最後の第76番札所金倉寺(こんぞうじ)へ。12:20着です。ここで全員が解散して、参加者はそれぞれ昼食をとり帰途に着きました。
 
今日の参加者の歩く後ろ姿を見ていると、リュックに「讃岐歩こう会」というシールをつけた人が多く見られました。「歩こう会」というぐらいだから、多分四国遍路には何度も出かけた「つわもの」揃いでしょう。私と同じ年代の人がほとんどだと思うのですが、男性も女性も歩く後ろ姿がすらっとしていて格好いい! 足の運びに無駄がありません。淡々と歩き続けます。私が若い頃に登山で使っていたMillet(ミレー)製のバックパックを背負っている女性が何人もいて懐かしくなりました。しかし何と言っても格好いいのは、途中で出合うお遍路さん。歩き遍路の人は一目で分かります。もちろん服装にもそれらしさがありますが、顔が引き締まっていて目つきが違います。そして体全体から何とも言えないオーラを発しています。今日のようなグループウオーキングでは、皆楽しそうに会話しながら歩いていますが、お遍路さんは無口で、先のことを考えてか何か思い詰めたような表情の人が多かったです。
 
私は金倉寺の境内のベンチに座って、持ってきたパンを食べ、それからせっかく讃岐に来たのだからと、うどんも食べに行きました。ウオーキングの会長さんが参加者に勧めた香川を代表する「釜揚げ」の名店が金倉寺のすぐそばにありました。行ってみると行列ができていましたが、大きな店なのでお客さんがすぐに回転していきます。メニューも釜揚げが主なので簡単。釜揚げうどんの小が250円です。湯がいたばかりの熱々の麺をたこつぼのような容器に入ったこれも熱々のダシにひたして食べます。加えるのはおろし生姜と刻みネギだけ。シンプルな味なのですがとても美味しい。もっと食べたいと思いましたがぐっと我慢。でも考えてみると、栄養は炭水化物が主で、野菜もタンパク質も足らないですね。うどん好きの香川県民には糖尿病の人が多いそうですが、よく分かります。

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うどんを食べて、また金倉寺に戻って大師堂をボールペンでスケッチしました。
色は帰宅後につけました。スケッチしていると、お寺の境内は静かで落ち着きます。時折お遍路の人が訪れるのがいい雰囲気です。参拝してさっさと次を急ぐ人が多い中で、こうして1時間たらずの時間でもゆっくりスケッチしていると、歩くだけではなくお遍路のまた違う味が楽しめる気がしました。四国八十八ヵ所の一部でいいから自分で歩いて、そして最後にスケッチを残せれば、それも楽しいと思います。
 
最後にいま来た遍路道を今度は一人で引き返してJR金蔵寺駅へ向かいました。ほんの短い距離なのに一人で歩き始めると道がわからなくてスマホを片手に右往左往。一人遍路の人、尊敬します。自分一人でも同行二人(どうぎょうににん)。金剛杖をついて歩く旅は、たとえ心細くても、いつも弘法大師と一緒にいると自分を励ましつつ歩む旅なのでしょう。精神が鍛えられます。


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ウオータフォード水彩紙 SMサイズ 
ボールペン
シュミンケ固形水彩絵の具
所要時間:1時間15分(線描き45分+着色30分)