わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

三江線 こんだけ乗れば 黒字かな (広島県三次市、島根県江津市 JR三江線水彩スケッチ)

2017年10月

JR三江(さんこう)線。2018年3月で廃線となるので、その前に乗っておきたいと思い出かけました。平日なのに、早朝のJR広島駅の芸備線ホームには三江線を目指す鉄道ファンがすでに列を作って並んでいました。芸備線の終着の三次を経てそれから三江線に乗り継ぎます。乗客は週末の混雑を避けた中高年の人が多いのですが、中には若い人も混じっていました。広島7:53発で、三次にはちょうど2時間後の9:53分着です。
 
芸備線に乗るのはこれが初めてでした。4両編成のディーゼルカー。広島を出てしばらくは車窓に見えるのは古い家屋と新興住宅地がまざったどこにでもある普通の景色でした。この芸備線沿線は広島への通勤圏としてどんどん発展しているようです。広島を出て20分余りで下深川(しもふかわ)着。ここで2両を切り離して残り2両で三次を目指します。車窓からはちょうど稲刈り中の田んぼや農家の人たち、農家の庭に色づく柿の木などが目に入ってきました。豊かな田園地帯です。8:40白木山駅着。白木山に登山に行く人達が何人か下車しました。このあたりから民家の屋根の石州瓦(せきしゅうがわら)が目立つようになります。赤っぽいオレンジ色の屋根と白壁の家がとてもきれいです。
 
ここで一句
赤瓦 列車は石見(いわみ)へ ひた走る
 
中国山地に入ったせいか、列車内で足元が少しスースーと冷えてきました。
冷房か 自然の寒さか 芸備線
 
やがて列車は終点三次に近づいてきました。三つの川が合流する有名な川霧の町です。この町を見るのも初めてです。前から一度来たいと思っていた町なので何だワクワクします。まだ列車は山間部を走っているのに、あたりに霧が立ち込めてきました。平地に出ると白い霧が田んぼを覆っていました。
 
山霧も 川霧もある 三次かな
 
9:53JR三次駅着。三江線石見川本(いわみかわもと)行きは10:02発、あまり時間がありません。トイレに行こうかと迷いましたがまず次の列車の座席確保が優先と、橋を渡って向かい側のホームに急ぎました。私ひとりならゆっくり急がないのですが、周りの人達が皆われ先にと走り出すので私も負けずにダッシュ。「日本人のゆとりの無さ」を普段は機会あるごとに言っている私ですが、いざという時には典型的な日本人になってしまいます。だめですね。列車は2両編成でほぼ満席状態。元気な人は自分で進んで席を立って線路が見える先頭列車の最前列や最後尾に行き、カメラを構えています。車両は廃線直前の赤字路線を走る車両とは思えない明るい車両でした。窓が大きく、シートは清潔な感じ。窓にはきれいな日除けカーテンもついて快適な雰囲気。この列車で終点の石見川本まで2時間余。それから1時間半後に石見川本から同じ列車が江津(ごうつ)へ向かいます。石見川本でお昼休憩というわけです。うまく考えられています。


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三江線の魅力は、三次を出たところから線路の横をゆったりと流れる一級河川江の川(ごうのかわ)と山間の緑、そして、点在する農家のきれいな石州瓦の赤オレンジ色の美しさです。江の川広島県の三次の近くの山間部から発し、三次の町中を流れて、川幅を広げながら山間部をゆったりと流れ、最後は日本海に注ぎます。まさに大河です。島根県の江津(ごうつ)は江の川の河口にできた町です。石州瓦はもちろんこの島根県西部が本場ですが、私が見た感じでは、東は鳥取県東部、西は山口県、南は広島県岡山県の北部までよく使われています。とてもきれいな赤オレンジ色に輝く瓦で、日本の地方生活文化の伝統を感じさせます。車内は、車窓から見える風景に思わずカメラのシャッターを押す人ばかり。春は桜、秋は紅葉が素晴らしいそうです。列車の運転手さんも絶景の駅に来るとしばらく停止。「ここで下車されて風景を撮られてはいかがでしょうか」と親切なアナウンスに、乗客は皆ホームに飛び出してパチリパチリ。沿線の線路脇や各駅には車で先まわりして三江線列車の写真撮影する人も多数見られました。


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そして終点の石見川本着。ここで一時間半の時間待ちです。トイレに行って、弁当を食べて、スケッチ場所を探して散策。川本町挙げてこの三江線の客を歓迎するムードが溢れています。弁当販売や無料休憩、お土産販売などの店が駅前にありました。地元の中学生が社会科の勉強で観光客にアンケート調査をするというので、NHKテレビの取材もありました。駅前にはこれといってスケッチポイントが無かったので、それではいっそのこと三江線の列車を描こうと、駅のホームに戻って日陰でスケッチブックを広げました。スケッチ時間は40分。これだけ時間が限られると、自分の描きたいものだけに集中します。列車の車体のブルーのラインは江の川のブルーを表しているのだそうです。スケッチを大急ぎでなんとか仕上げて、次の江津行きの列車を待つ人の列に合流。そして13:45石見川本発。約1時間後の14:54に江津に着きました。

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三江線、乗ってみて本当によかったと思いました。これが廃線になるのはもったいない。しかし、これまでは普段乗る人がいなかったんでしょうね。列車の本数があまりに少なくて、しかも運行時間があまり都合よくない。住民が車の便利さに負けてしまったのでしょうか。しかし、初めにこの山間部に三江線の線路を敷いた先人たちはどんなに苦労したことでしょう。廃線になるのが本当にもったいない。
 
いい旅をすると次々と俳句(川柳?)の駄作が頭に浮かぶ癖のある私です。最後にもう一句。
 
三江線 手を振り別れる 有難う


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オーターフォード水彩紙 F4 中目 ホワイト
青墨筆ペン
ウインザー&ニュートン固形水彩絵具
所要時間:40分