わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

湿原を JR列車が ひた走る (北海道 釧路郡 釧路湿原・川上郡弟子屈(てしかが)町 水彩スケッチ)

2017年5月


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釧路のホテルで朝4時半に起床して、初日・2日目と同じパンとヨーグルトとバナナを食べて、釧路発6時05分の普通列車の網走行きに乗りました。初めの予定は、6時24分に釧路湿原駅で下車し、そこから歩いてすぐの展望台で3時間近くスケッチし、9時39分の帰りの普通列車に乗って釧路に戻るというものでした。しかし、昨日のノサップ岬に行くバスで分かったことは、この朝早い時間には観光地といえども乗客がとても少ないということです。昨晩ホテルで予定をいろいろと考えているうちに、ふと不安が頭をよぎりました。「もし一人で湿原の展望台でスケッチしていてヒグマに出会ったらどうしよう」。「そんなことはまずないだろう」と思いながら念のためスマホGoogleで「釧路湿原にヒグマは出ますか?」と文字を入れて検索したところ、「確率の問題なのでなんとも言えません」という回答が出てきました。「わあー、これは大変だあ」とあわてて予定を変更。明日の北海道新聞に「旅行者、湿原でヒグマに襲われる」と出るのはちょっと嫌ですものね。最近、東北地方で山菜採りの人がクマの犠牲になったというニュースも頭をよりぎました。それで今日は釧路湿原駅を通り過ぎて摩周(ましゅう)駅まで行き、その間、車窓から釧路湿原を楽しんで、それから普通列車で釧路に戻ることにしました。釧路発の南千歳経由札幌行きの特急は11時24分釧路発なので、JR列車がきちんと動いてくれれば問題なく新千歳空港発の夕方の飛行機に間に合います。

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釧路駅の朝6時05分。またまたワンマンカーの車1両での運行です。朝が早いのに高校生が沢山乗って来ました。釧路市の郊外の高校に行く生徒なんだなあ、と余り気にしませんでしたが、途中の駅でもかなりの生徒が乗り込んできて、ワンマンカーの座席は一杯になりました。釧路駅から3つ目の駅が釧路湿原駅。湿原の近くのうっそうとした樹木に覆われた山小屋風の駅でしたが、誰も降りる人は無し。駅も当然無人で入り口も閉まっているようでした。駅の向こうに山の中に入る薄暗い遊歩道が見えました。「あーあ、ここで降りなくてよかった」と胸をなでおろしました。その後、ワンマンカーは沢山の高校生を乗せたまま、見飽きるほど広い湿原と沢山の樹木の中を走り、やがて湿原を通り過ぎて7時28分に標茶(しべちゃ)という駅に着きました。ここで高校生たちが下車。この高校生たちはこの湿原と鬱蒼とした樹林の風景の中を毎日片道約1時間半かけて通っているわけですね。あとでインターネットで調べると、標茶には道立標茶高校があり、昔からこの地域の酪農を支える若い人材を育てているようです。この高校生たち、冬も極寒の中を往復で3時間もかけて高校に通うと思うと、これだけで何だかドラマになりそうです。みんな、すご過ぎるね。頑張ってください!

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目的地の摩周では簡単に筆ペンだけで駅の近くの釧路川のスケッチをしました。10分ほどのスケッチです。帰りのワンマンカーでもう一度釧路湿原の風景を堪能し、無事釧路に戻りました。ちなみに、帰りに9時39分に通った釧路湿原駅(初めの予定ではこの列車で釧路に帰ることにしていました)では誰も列車に乗り込んで来ませんでした。もし、当初の予定通り釧路湿原駅で降りていたら、誰もいない一人ぼっちの、ちょっと怖いスケッチになっていたのは間違いありません。それはそれでいい経験だったかもしれませんが。
 

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釧路では、「全日本旅行地図帳」に載っていた釧路の駅弁「タラバ寿司」を迷わず買いました。ちょうど出来たての商品を業者さんが駅の売店に運び込んでいました。ちょっと高めですが、とても美味しそうです。

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JR釧路駅で11時24分発の特急スーパーおおぞらを待っていると、「トナム駅付近で線路付近の地面の陥没が見つかりましたので、念のため安全点検をしています。点検が終わり次第発車の予定です」との駅のアナウンスがありました。結局1時間ほど遅れて列車が発車しました。私は駅弁を美味しくいただきましたが、この間、釧路駅では、駅員さんが乗客のために駅待合室付近に椅子を多数並べ、いらいらする乗客の対応に追われていました。中には列車をキャンセルして払い戻しを受ける乗客もいました。この辺りの様子をみていると、どうも日本人はちょっとしたことでパニックに陥りやすい気がします。接続の時間もあるのでしょうが、気長に待とう、何とかなるさ、というゆとりがありません。外国に行くと列車の遅れや突然の運休はいつものことです。事故もあればストライキもあります。結局、列車は1時間遅れのまま南千歳に着きましたが、私は飛行機の出発時刻にはゆとりをもたせていたので、十分間に合いました。
 
今回北海道をJRで旅していて、この広大な地域でしかも自然の豊かな場所で線路の管理から列車の運転まですべてスムーズに行うには相当の努力がいることが身にしみて分かりました。今回の地面の陥没にしても、いつどこで起きるか分かりませんし、線路を走りながら改めてその様子をみると、線路、枕木(いまはコンクリート製です)、そしてバラスト(砂利)が当然の事ながらどこまでも維持されています。荒波に浸食されそうな海岸でも、クマが出そうな山奥でも、地面が軟弱な湿地でも、豪雪地帯でもこの線路はどこまでも続くのです。この長い長い線路の保線作業にはものすごい労力を要することはよく分かります。冬の除雪も大変でしょうが、樹木が多い北海道では線路脇の樹木の伐採も大変でしょう。何年か前、JR北海道では列車の脱線事故が相次いて、厳しい批判を浴びましたが、これだけ広い北海道で、しかも過酷な自然の中で、列車を時間通りに動かすのは大変なことです。私はJR北海道にとても同情的な気持ちになりました。JR職員はみんな頑張っているんだから、利用する側も何でも完璧を求めないで、もうちょっとゆとりを持って、感謝の気持ちを持って対応したほうがいいと思います。これが今回の旅で私が最後に感じたことです。