わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

ノサップは 嵐も吹かず 雨もなし (北海道 根室市ノサップ岬 水彩スケッチ)

2017年5月
 
根室市内のホテルで朝4時半に起床。朝食は昨晩食べたバナナとヨーグルトとパンの残りを冷蔵庫に入れておいて、それを食べました。昨日のスーパーのレジのおじさん、ヨーグルトのスプーンをくれなかったので、仕方なくヨーグルトの容器に直接口をつけて吸い込みました。旅先での不便はなんでも気合で乗り切ります。朝5時30分にホテルを出て、歩いて根室駅へ。昨晩歩いた道なので迷いません。朝歩いてみると、昨晩の町の寂しさは無くて、北国独特の建物や空の色や道端に咲く植物に心をひかれました。



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駅のすぐそばには結構立派なキリスト教会と幼稚園があって、何となく絵心をそそられました。時間があればスケッチするのですが、バスの出発の時間があるのでそのまま通り過ぎました。根室駅前。やはり寂しさは変わりませんが、朝見る駅舎は昨晩より少し明るく元気に見えました。


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駅前のバスターミナル(といっても乗り場は2つ)からノサップ岬行きのバスがでます。朝の6時30分の始発バスに乗るために往復の乗車券を買ってバスを待ちました。バスを待っているのは私一人。そしてバスが到着。「バスは往復券が安いですよ」と若い運転手さん。「ええ、もう買いました」と私。現地到着7時14分なので45分ほどのバスの旅になります。一番前の席に座っていつでもカメラを構えられるように準備しました。根室は駅前は寂しいけれど、町は意外と大きい。根室市役所には「北方領土は日本の領土」のスローガン。根室はやはり「北方領土返還」の町なんですね。バスの通り道で特に目を引いたのが、道立根室高校の大変立派な校舎でした。町にこんな立派な高校があれば、若い人たちは恵まれた環境で誇りをもって勉強できるでしょう。この高校は町の大事な財産のように見えました。


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根室高校を過ぎた辺りから、周囲が急に荒涼とした風景に変わりました。道は岬に向かって根室半島の海岸線を走ります。海が直ぐそばなので朝霧が立ち込めてきました。霧に覆われた真っ直ぐな一本道をバスは行きます。乗客は私だけ。運転手さんは無言ですが、私が風景にあっけにとられているのをよく分かっている様子でした。ここを初めて訪れる人は、多分だれでもこの荒涼とした風景にびっくりするでしょうね。


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そして終点のノサップ(納沙布)岬到着。これが日本最東端のバス停です。バスを降りて、広い広場をつっきって北方4島が見える場所まで歩きました。霧があって、国後島が前方左手にかすかに見えます。右手にはすぐそこに歯舞諸島が見えました。これらの島々は本当にここからわずかの距離しか離れていません。


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ノサップ岬の突端にノサップ岬灯台があります。きょうのスケッチは灯台を入れたノサップ岬と決めました。7時半にイーゼルを立てて、紙を2枚並べてクリップで固定して、さあいよいよスケッチです。


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スケッチを始めて30分たって朝8時。時を告げる音楽がどこからか大音響で流れてきました。どこかで聞いたことのあるメロディーです。「ああ、あれだ」。分かりました。「ここに幸あり」です。
 
嵐も吹けば 雨も降る
女の道よ なぜ険し
君をたよりに わたしは生きる
ここに幸あり 青い空
 
なんでこの曲がこのノサップ岬にながれるんだろう、と不思議に思いましたが、すぐにスケッチに向き直って集中。あとで調べると、この曲の作詞者(高橋掬太郎)が根室出身なんだそうです。
「女の道よ なぜ険し」が「北方四島返還」とちょっと結びつかない気がするのですが………
 
さて、それにしても早朝からこんな所でスケッチする人なんて多分珍しいのでしょうね。水産業をやっている人や地元の商店の人がわざわざ軽トラックを止めて絵を見てくれました。そのうち車で訪れた観光客もぼつぼつ見えはじめて、その人たちも通りがかりに声をかけてくれました。「どれが国後島ですか?」と一人旅の学生さんと思われる男性に聞かれたので、「あの向こうですよ、もうすぐ霧が晴れると山がくっきり見えますよ」と地元の人のような口ぶりで返事をしました。1時間ぐらい早くここに来ているだけで、ついガイドみたいになってしまいます。


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今日は暖かく天気がよくて、2時間もかからないで絵が出来ました。9時過ぎにさっき乗せてもらったバスの運転手さんか近寄ってきて、「絵を描きに来たんですね」と声をかけてくれました。「わあ、きれいだ。写真撮っていいですか?」と聞かれたので、「ええ、どうぞどうぞ」と返事しました。根室駅とノサップ岬の間の2回目のバスで9時過ぎにここに来て、1時間ほど出発時間待ちのようです。「今日は晴れて島がとてもきれいに見えますね」と運転手さん。若い運転手さんの純朴な道産子アクセントがとてもよかったです。


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絵の道具をしまい、記念館を見て、昼食は近くの食堂でオホーツクラーメン、680円。ホタテ、昆布、ふのりがのったラーメンで、ふのりがとても美味しかったです。おみやげにも昆布とふのりを買ってしまいました。


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帰りは1150分発のバスで根室へ。それからまた根室本線の「快速」に2時間半揺られて釧路へ。晴天の昼間に見る沿線風景はやはり荒涼としていますが、何かとても美しくて、ちょっと駅に降りてスケッチしたくなるような風景の連続でした。行きに怖かった落石駅も帰りの陽光のなかでは輝いて見えました。


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釧路に着いてすぐに駅の近くのホテルにチェックインして、軽いスケッチ道具をもって街に出かけました。「快速」の車窓から見えた釧路川とそこにかかる橋の風景がとてもよかったので、そこを目指しました。


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釧路川の広い河口の川べりは釧路フィッシャーマンズ・ワーフになっていて、土産物屋さんやカフェ、レストランなどがならぶ大きな建物とおしゃれな通りになっていました。日暮れの近い川の風景を30分ほどで描きました。気温が次第に下がってきたので早めにスケッチを切り上げてホテルへ。夕食はホテルの近くの食堂で。海鮮雑炊を頼みましたが、味はまあまあ。明日は、また早朝の列車で釧路湿原へ出かけます。


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1枚目
ラングトン水彩紙 粗目 F6 2枚続けて
ぺんてる筆ペン(青墨)
ウインザー&ニュートン固形水彩絵の具
所要時間:2時間



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2枚目
ウオーターフォード水彩紙 中目 SMサイズ見開き
呉竹筆ペン(青墨)
ウインザー&ニュートン固形水彩絵の具
所要時間:30