わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

長崎では やっぱりカステラ 買いました (長崎県長崎市 福砂屋本店 水彩スケッチ)

2016年8月10日


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2泊した思案橋のホテルのすぐ近くに、カステラで有名な福砂屋の本店がありました。堂々とした造りの店で、長崎に来た初日からこの店の前を通るたびに、せっかく長崎に来たのだからここでカステラをお土産に買って帰りたいと思っていました。今日は長崎の最終日。近くの商店の邪魔にならないように、朝7時に福砂屋の前に来てスケッチを始めました。開店が8時半なので、それまで1時間半あります。
 
まだ開店1時間半前ですが、次々に若い女性の店員さんが出勤してきて、店の制服に着替えて店の周りの掃除を始めました。通りをホウキではいて水をまいてガラス戸を拭いてと、なかなかキビキビと働いています。絵を描いていると、通りがかった地元の年配の男性が多分「前はもっと良かった」というような事を長崎弁で話しかけてこられたのですが、殆ど言葉が分かりません。「はあ、はあ」と分かったようなふりをして返事をしましたが、せっかく話しかけてもらったのに申し訳ない気がしました。私は若い頃に福岡に15年住んでいたので、博多弁には慣れていますが、長崎弁もそれと近いだろうと思っていたら大間違いでした。やっぱり地方に行くと分からない言葉がありますね。それがまた素晴らしいのですが。

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朝8時半になって、絵を描き終わりました。8時前からすぐ目の前の道路に土木作業の人たちが少しずつ集まって来ているのに気がつきました。よく見ると私が絵を描いていた場所のすぐ目の前の道路に今日の作業の目印と思われるアスファルトの切り込み線がありました。作業の人たち、多分私に遠慮して作業を始められなかったのだと思います。本当に申し訳ないことをしました。長崎の人、みんな遠慮深く優しいですね。
 
カステラの店は8時半の開店前からお客さんが数人、店先で待機。私も店に入り、カステラ3本注文しました。ついでにお店を描いた絵を店員さんに見てもらいました。「丁度いい時に絵を描いて頂きました。ほんの2,3日前まで店の建物の保存修理で全面に工事用のシートを張っていたんですよ」と店員に言われ、「ああそうだったんだ。さっき、絵を描いている時に話しかけてこられた人も多分そのことを言っていたのだ」と納得しました。



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昼過ぎの長崎発の列車までまだ十分に時間があったので、市電に乗ってめがね橋方面へ向かいました。途中赤ちゃんを乳母車に乗せた若いお母さんに道を尋ねたのですが、とても親切な方でした。長崎の人は優しいです。めがね橋、あまり期待はしていなかったのですが、行ってみるとめがね橋だけではなく幾つかの橋が中島川にかかっていて、どれも古いアーチ型の石橋でとても素晴らしかったです。ただ、ちょっと暑さがこたえました。まだ午前10時なのですが、かなり強い日差しでした。ここではベンチに座ってペンで手帳に2、3枚簡単なスケッチをしただけで、早めに長崎駅に向かいました。


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長崎発「白いかもめ号」。指定席は満席になりました。そういえば来るときも満席でした。私の隣の席には、大きくHard Rock と胸に書かれたTシャツ姿の若いアメリカ人の青年が座りました。仲間の人たちと合わせて10人ぐらいの団体でした。この青年、大きなリュックサックが荷物棚に入らなくて、仕方なく自分の座席の前に置いて、そこから日本製のどこでも売っている安価なスケッチブックを取り出してすぐに日本の毛筆ペン(黒と朱)で絵を描き始めました。「アーティストですか?」と聞くと、「コンピュータで抽象画を描くプロのアーティストです」と返事が返ってきました。いろいろしゃべりながら2枚、3枚とどんどん絵を描いていきます。東部の若者の英語は比較的分かりやすいのですが、それでも時々、わからなくなりました。日本人でも長崎に来ると地元の方言がわからなくなるぐらいだから、英語が一部わからないぐらいは気になりません。お互いに聞き返しながら何とか会話が続きました。仕事場ではもちろんコンピュータに向かうのですが、普段は時間があるといつもスケッチブックに線を描いてイメージをふくらませるのだそうです。ボストンで生まれ、首都ワシントンの大学で絵画を専攻し、現在はボストンで活動をしているという彼。まだ20歳代前半ぐらいに見えます。日本の浮世絵やアニメ(スタジオジブリの作品)に憧れ、一度日本に来たくて、今回広島、長崎を訪れる国際ピースフォーラムの一員として日本に来たそうです。「アメリカの小、中学校、高校では、東京大空襲や広島・長崎については殆ど教わらなかった。今回は戦争の現実を知って気持ちが苦しくなった。辛い旅だった。これが終わったら東京に行くけど、それがすごく楽しみ」と素直に話してくれました。

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このアメリカの青年(ジョン君)は、とにかく型破りでした。大きなリュックサックからまず、ぐじゃぐじゃに押し込んだ防寒着を取り出し(アメリカ東部は夏でも寒いですものね。念のため持ってきた防寒着は役に立たないし、日本のこの猛烈な暑さには参ったでしょうね)、それから次に何が出てくるのかと思ったら、ビニール袋一杯にごちゃごちゃにつめ込まれた大小様々なペン(カラーのフェルトペンなど)でした。多分50本ぐらいは入っていると思われました。そこから自分の気分で好きなペンを取り出し、どんどんラインを書いていきます。

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「日本の絵画では、浮世絵でもマンガでも、ラインがすごく大事なんだよ」と言ってあげると、「そうそう、ラインで絵のイメージができるからね」とさすがにプロの返事です。絵に夢中になると、途中に検札で車掌さんからチェックをうけた乗車券・指定券もちゃんとしまわず床に落としたまま。一心不乱のその姿、刺激を受けました。これが本当のアーティストの姿だなあ、と思いました。そして記念にと言って私に今描いた絵の1枚をくれました。新幹線への乗り換えで私も彼らも新鳥栖駅で下車したので、ほんの1時間ほどの短い時間の会話でしたが、アメリカの若者の素直さ、ユニークさ、一生懸命さ、人なつっこさに感心させられました。日本の若者にはこういう人はちょっといないですね。

面白いことに、このジョンくんも福砂屋のカステラを1本お土産に買っていました。しかし、絵に夢中でそのカステラも座席の前の床に放り出してありましたが。帰宅して、家族でお土産のカステラを頂きました。長崎の街の魅力と、長崎のカステラへの思いが、また一段と強くなった今回の旅でした。


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