秋蝉(しゅうせん)
2022年8月17日
「秋蝉やしずかに暮るる里のみち」
今日の季語は「秋蝉(しゅうせん)」。秋の蝉だ。『今はじめる人のための俳句歳時記』(角川ソフィア文庫)で「秋蝉」を見てみた。
「単に蝉といえば夏の季語だが、ひぐらしや法師蝉は秋。発生の時期が遅れるだけでなく、油蝉やみんみん蝉の暑苦しい声に対し、涼しげで哀調を帯びる。」
岡山市あたりではツクツクホウシが鳴き始めるのが早くて、7月末にはその声を聞く。今は朝の散歩道で夏のうるさい程の蝉しぐれが収まって、ちょっと寂しいぐらい静かな日もある。ツクツクホウシの鳴き声はその寂しさに輪をかける。季節が確実に動いていると分かる瞬間だ。
秋の蝉も多くの俳人に詠まれている。三つの句を紹介する。
「秋蝉のなきしづみたる雲の中」 飯田蛇笏
「木洩日に鳴きつまづきて秋の蝉」 稲畑汀子
「啼きながら蟻にひかるる秋の蝉」 正岡子規
第1句は蛇笏の句。夏の蝉にくらべて秋の蝉の声が涼しげで風とともに雲の中に消えていくような、そんなはかなさが感じられる。第2句。「蝉が鳴きつまずく」というのが見事な表現だ。確かに急に鳴きやんで、また鳴き出すことがよくある。秋の木洩れ日の美しい風景が目に浮かびそうだ。第3句。子規の句。生々しくも悲しい生き物の運命を見事に写生している。これが子規のリアリティなのか。
俳句を始めると、季節の変化にとても敏感になる。そして自然をていねいに観察する機会が増える。一日一句の積み重ねで日々の記録も残せる。俳句を始めて今約2ヶ月が過ぎた。