わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『西の魔女が死んだ』(梨木香歩著、新潮文庫)

2022年4月30日

 

 

この本を読むきっかけは、『ぼんやりの時間』(辰濃和男著、岩波新書)の中で本書の紹介文に出会ったことだった。辰濃さんがアメリカの絵本作家ターシャ・テューダーの本と比べながら本書について書いている。人にはぼんやり出来る場所—居場所—が必要だという辰濃さんの主張にピッタリの内容だ。

 

小学校を卒業し中学に入ったばかりのまいは、学校になじめず不登校となる。両親の勧めで田舎に住む母方の祖母(英国人)の所にしばらく滞在することになったまい。そこでの祖母との生活や周囲の自然との出会いで、次第にまいは自分の生きるペースを取り戻し、立ち直っていく。感動的なのはその祖母の生き方、そして最後の死に方だ。まさに最近テレビでよく紹介されるターシャ・テューダーの生活と同じ。自然の中でゆったりと生きることの大切さを読者に訴えている。

 

巻末の短い解説(本書の表紙カバーを描いた早川司寿乃さんによる)もいい。最後に三つの提案が書かれていた。一つ目は、ごはんの時、ひとくち、ひちくちをよく噛んで食べること。命ある物のその命をいただいて自分が生きていることを思い出す。二つ目は、時々テレビやラジオの音をすべて消すこと。静けさは大事だ。三つ目は、庭や公園で裸足で立ってみること。自分の中で何かが目覚める感覚を体験する。私も今日早速それらを実行してみた。今のゆったりとした静かな暮らしをいつまでも続けたいと思いながら。