わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんな本読んだことありますか? 『文房具56話』(串田孫一著、ちくま文庫)

2020年11月19日

 

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文房具については、誰でも、昔の子供の頃に使ったノートの思い出や、現在使っている文具に対する愛着があります。串田孫一氏は1915年(大正4年)生まれ2005年(平成17年)没の文筆家。『山のパンセ』などのエッセイで有名です。この本は、串田さんが文房具の思い出について書いたエッセイです。2001年の出版です。

 

この本で書かれているのは、帳面、ペン先、消しゴム、ぶんまわし、インキ、万年筆、糊、白墨、小刀、定規、はさみ、手帳、画びょう、輪ゴム、吸取紙、鉛筆、下敷、文鎮、封筒、便箋、カーボン紙、鳩目パンチ、筆、セロハンテープ、ホッチキス、アルバム、硯(すずり)、朱肉、ボールペン、ペーパーナイフ、スクラップブック、鉛筆削り、クレヨン、謄写版、筆入れ、色鉛筆、原稿用紙、日記帳、クリップ、そろばん、虫眼鏡、地球儀など。他に私が知らない文房具もいくつかありました。

 

戦前・戦中・戦後の昭和の時代を中心に串田さんが使った文房具への思い出を読んで感じたのは、今でも、鉛筆や定規、ボールペンや糊など机の上の必須アイテムはありますが、かなりの物がすでに過去の遺物になりつつあることです。特にパソコンやスマホが生活の必需品となり、インターネットで即座に世界とつながる現代人の中には、これらの文房具を使ったことのない人も多いでしょう。

 

私のような団塊世代の人間だと、まだ串田さんのエッセイに書かれていることを懐かしく感じます。またそれと同時に、文房具の変化を仕事の中で直接感じて来た世代なので、時代の変化への特別の思いがあります。最近は簡単なハガキ以外は手紙を書かなくなりました。ほとんどEメールです。かつて仕事で海外と連絡するのに、航空便を頻繁に使っていた時代がうそのようです。昔(私の20歳代の前半まで)はコピー機がなくて、主に謄写版ガリ版)印刷をしていました。タイプライターもなつかしいです。

 

文具の劇的な変化は、パソコンの登場で始まりました。NECの初期のコンピュータPC-9800シリーズが50万円もした時代に、我が家でも貯金をはたいてこれを買いました(35年前)。高かったけれど、仕事には必須になっていました。MacのClassicも30年前(1990年頃)に買いました。コンパクトで使い勝手がよく、驚きのパソコンでした。あれから、あれよあれよと言う間にインターネットの時代が来ました。

 

昨年まで、短い期間でしたが小学校にボランディアで出かけていました。その時には、机に置かれた子どもたちのノートや筆入れの中身に関心がありました。鉛筆、消しゴム、定規・・・これは昔とそれほど大きく変わっていなくて、ちょっとほっとしました。しかし、このコロナ禍で、生徒全員にタブレットが配布される時代が到来しました。これがこれから先、彼等の文房具にも大きな変化をもたらすでしょう。

 

この『文房具56話』は文房具を通して時代の変化を知るよい機会を与えてくれます。