わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

100円で アインシュタインに 会える街 (門司港 水彩スケッチ 福岡県北九州市門司区)

20129

 
門司港にはいろいろな見どころがあります。そのひとつが重要文化財の「旧門司三井倶楽部」です。門司港駅の駅舎をスケッチに来て、お昼ご飯を名物の「焼きカレー」にしようと考えて、焼きカレーののぼりを目安に店探しをしていて偶然入ったのが、この三井倶楽部の建物でした。まず、お目当ての焼きカレーを注文。広い落ち着いた食堂。レトロな雰囲気のテーブルや室内装飾、そしてこれまたレトロなウエートレスさん達。

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焼きカレーとは、ちょうどご飯が韓国の石焼ビビンバのように鉄の容器の中で程よく熱く焼けこげていて、そこにカレーがかかり、またその上に乗ったチーズがとろけている、というちょっと変わったカレーライスです。初めて食べたのですが、味は大変結構でした。焼きカレーセットで1470円です。


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 この三井倶楽部の2階が展示室になっていて、100円で展示を見ることができます。その展示の目玉が、アインシュタイン夫妻の滞在した部屋でした。アインシュタイン19221117日から1229日まで講演で日本に滞在しました。三井倶楽部には1225日から29日まで滞在しました。 日本から招待を受けた時、何十日も船旅をしてでも、東洋の不思議な国日本へ行ってみたいと強く思い、訪日を決意されたようです。そして、フランス・マルセイユ出帆の日本郵船「北野丸」で訪日の途上、大正11年(19221112日に、香港から上海への船中で「1921年度ノーベル賞」受賞の電報を受け取ったそうです。その折の写真が展示してありました。神戸に入港し、門司港から出航するまで、日本各地で講演しました。九州では福岡で講演し、その講演で残したアインシュタインの黒板の字(旧制福岡中学が黒板を提供し、その板書をニスで固定して保存したが、その後盗難に会い紛失)の写真が県立福岡高校に残っています。


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 アインシュタインは誰もが知る理論物理学の天才です。その理論の中身は分からなくても、その重要性は高校の物理の授業で何度も聞かされましたね。私は研究の中身は分からなくても、科学者の生き方に関心があります。芸術家でも文学作家でも、その作品ももちろん興味がありますが、それを作り出した人の生き方に興味をおぼえます。科学も人がなせる業です。真理追求の裏にある人間ドラマは、大変面白いです。真理を知りたいという純粋な好奇心と、有名になって科学史に名を残したいという功名心と、激烈な競争と、発見の歓喜とそこにいたる焦燥と、そして概して質素で貧しい生活と。

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 関門海峡が見える港で、旧門司税関の建物をスケッチしました。関門海峡は初めて見ましたが、本当に狭い海峡です。対岸が下関ですが、近すぎて海峡とは思えない距離です。関門橋も、え?あれが有名な関門橋というような長さの橋です。この辺りは、源平の合戦から明治維新にいたる日本の歴史の大事な舞台です。その後も、筑豊炭田を背景にした八幡製鉄(現 新日鉄八幡)を中心とした重工業で、日本の近代化を牽引してきました。中学校の社会の授業で習った日本四大工業地帯のひとつ北九州工業地帯がそれです。今、日本の製造業が競争力を失い、時代が大きく転換しつつありますが、これから先、門司港は産業港としての役割を終えて、ただ観光地として生き延びていくのでしょうか。沢山のレストラン、人のにぎわいは、むしろ地元の人たちがそれを望ましいこととして受け入れていることを示しているような気がしました。平和な国の平和な港、門司港。また、これから個性を発揮して、おおいに発展して欲しいものです。

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