わたしの水彩スケッチと読書の旅

知の冒険? いえいえ、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『谷内六郎 いつか見た夢』(谷内六郎・谷内達子・橋本治・芸術新潮編集部著、新潮社とんぼの本)

2021年10月27日

 

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先日、NHKの『日曜美術館』で画家・谷内六郎(1921〜1981)の生誕100年を記念した特集を放送していました。谷内六郎は『週間新潮』の表紙絵で有名です。1956年の創刊号から1981年59歳で没するまで、1335枚にのぼる表紙絵を描き続けました。

 

毎週1枚という仕事を死ぬまで淡々とこなす。絵を描いているとわかりますが、これはなかなか出来ないことです。25年間途切れることなく、これに没頭して自分の人生をかけたわけですね。これがすばらしいです。週刊新潮は時々見ていたのでその表紙絵の存在はよく知っていました。一つ一つに注意したわけではないのですが、いつも素朴なファンタジックな絵だなあと思って見ていました。

 

本書を見て、今あらためて谷内の絵を振り返ってみると、水彩絵の具(多分不透明水彩です)で描かれた世界は、鮮やかな色彩の明るい絵が多いです。子供の頃の思い出や、子供の眼で見た昭和の世界が幻想的に描かれています。これは写生にもとづく絵ではなく、自分の頭の中に浮かんでくるイメージを絵にしたものだそうです。頭の中にこんなイメージが次々と浮かんでくるというのがすばらしいです。そして25年間の長い間、絵のスタイルが変わらなかったのもすごい。

 

これらの絵が人々の心に残ったのは、一つ一つの絵に物語(ストーリー)が感じられるからでしょう。誰かが、物語のない絵はいくらうまく描けてもあとに残らないと言っていましたが、その通りだとおもいます。子供や動物が登場する谷内の絵には、いつも物語やメッセージがあます。

 

本書は2021年8月発行。『谷内六郎 昭和の想い出』(2006年刊、とんぼの本)の増補改装版になります。谷内の生涯や家族を紹介する記事もとても興味深いです。これだけの資料を集めて1冊の本に仕上げた編集部の仕事も素晴らしいと思いました。