寒風や 酒の香(か)甘く 漂(ただよ)いぬ (京都市伏見区 水彩スケッチ)
2018年12月
真冬並みの寒さという天気予報の中、グループスケッチ(木曜スケッチ会)で京都の伏見に来ました。今朝の京都は確かに気温は低かったのですが、きれいな青空が広がっていました。JR京都駅から近鉄京都線に乗り、13分で桃山御陵前駅着。JR新幹線で京都へ来る場合、JR京都駅から近鉄線への乗り換えはとても分かりやすくて楽です。
今日の参加者9名。桃山御陵駅前から歩いて商店街を通って目的地の寺田屋・酒蔵のある風景を目指しました。商店街は年末を間近に控えた週末のせいか、今どきの商店街にしては珍しく活気が感じられました。以前はどんな地方都市にも必ず人通りの多い商店街があり、年末になると大勢の買い物客でごった返していましたが、今はそんな商店街も姿を消しました。古いものを大事にする京都だからこそ昔ながらの商店街の雰囲気が保たれるのかもしれません。
「早や師走 商店街の 賑(にぎ)やかさ」
「たい焼きを 売る娘(こ)に竜馬の 道を聞き」
寺田屋が見えてきました。明治維新(1868年)から今年はちょうど150年。記念すべき年に、幕末の大きな出来事の舞台となった伏見やその一角にある寺田屋を訪れる人は多いようです。今日も朝から観光客が寺田屋の周辺に多数来て、周りを散策したり写真を撮ったりしていました。若い女性の観光客が多く見られました。
「竜馬様! 見上げる寺田屋 熱視線」
寺田屋を後にし、古い酒蔵のある松本酒造の方向に向かいました。やがて新高瀬川沿いに立ち並ぶ酒蔵が見えてきました。「わあ、絶景!!」。見事な酒蔵です。会社の入り口には、「登録有形文化財」、「近代化産業遺産」「京都市重要景観建造物」などのプレートが貼ってありました。
迷わずここを描くことに決めて、荷物を下ろして、イーゼルを立ててスケッチ開始。10時半から午後1時半までの3時間。これからが集中する時間です。途中話しかけてくる町の人達と楽しく会話しながら、眼の前に広がる圧倒的迫力の酒蔵のスケッチを進めました。途中休憩しながら時間いっぱいまで描いて、描ききったという満足感で満たされました。
集合時間が来て、冬の風が少し冷たくなったし、お腹が空いたので、皆で先に昼食を取ることにしました。ガイドブックにも載っている有名な鶏料理の店を探してそこに入りました。待ち時間30分。私達のグループの人達は、その間も時間を惜しんで店の外でスケッチをするという熱心さ。皆、絵が好きな人達ばかりです。そのうち順番が来て全員席に着きました。私が注文したのは「とりそぼろご飯」と粕汁。800円なのにとても美味しい味でした。さすがに一流の店です。
食事後、店の向かい側の建物の前のスペースを借りて、全員で簡単な講評会。今回も、皆さんとてもいい絵ができました。やはりグループで来ると、他の人の絵を見て勉強になります。通りがかった人たちも、「よう描けとるなあ」と言ってくれました。それから荷物を片付け、帰りの新幹線の時間に間に合うように急ぎ足で、もとの近鉄桃山御陵前駅へ向かいました。
スケッチを終わってお昼ご飯を食べに行く道の途中で、グループのWさんがお寺の屋根に桃の飾り瓦があるのを見つけて驚いていましたが、私も初めてそんな飾り瓦を見て興味を引かれました。安土桃山時代の桃山は、豊臣秀吉がここ伏見に築いた伏見城のあった山のことだと聞いていたので、それで桃の飾り瓦なのかな、と思って帰宅してインターネットで調べてみました。すると、桃の飾り瓦は魔除けとして全国のあちこちの神社仏閣などで使われていて、なんと我が岡山城の天守閣にも金の桃瓦があるとか。そんなこと知りませんでした。そして、伏見桃山御陵は明治天皇の墓所であることも知りませんでした。明治以降の明治天皇・大正天皇・昭和天皇の墓所は全て関東(東京)にあるとばかり思っていましたので、意外でした。自分の無知が恥ずかしいばかりです。旅をするといろいろ勉強になります。ちなみに今日描いた松本酒造のお酒の銘柄は「桃の滴(しずく)」だそうです。桃から広がる新たな知の世界です。
「桃の滴(しずく) そしてお寺の 桃瓦(ももがわら)」
ウオーターフォード水彩紙 中目 F6 2枚
鉛筆、青墨筆ペン
シュミンケ固形水彩絵の具
所要時間:3時間