わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

秋の日の 人の多さよ 蔵の町 (岡山県倉敷市美観地区 水彩スケッチ)

201210

 

今日は、私の最も好きな街のひとつ、倉敷のスケッチです。JR倉敷駅から南へまっすぐ、または駅から左すぐの商店街を歩いて15分程で、古い蔵作りの建物が立ち並ぶ美観地区に来ます。ここには、日本で最初にできた西洋美術館である大原美術館があり、倉敷川に沿った通りには、土産物を売る店や、レストラン、喫茶店、古い日本旅館、画廊、博物館などが立ち並んでいます。



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 今日は体育の日を含めた三連休の初日で、倉敷は多くの人でにぎわっていました。ここの特徴は、田舎なのに(といっても人口は50万人弱ある中核市です)、外国人観光客(英語、中国語、韓国語がよく聞こえます)が多いことです。多分、京都、奈良を訪れて、さらに余裕のある人たちが、神戸、広島、安芸の宮島、そして倉敷にも立ち寄るのでしょう。


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今日は余りにも人が多くて、描きたい場所はたくさんあるのですが、通りでスケッチブックを広げる勇気がでませんでした。本当に私は小心者ですね。いろいろ歩き回ったあげく、阿智神社にのぼる石段から少し横にそれた場所に、倉敷の大原美術館とその周辺を見渡せる絶好の場所を見つけ、スケッチを始めました。まず、地元の人ならだれでも知っている「えびす饅頭」一個75円を二つ頬張ってから、スケッチ開始です。この「えびす饅頭」はいわゆる大判焼きなのですが、つぶあんが特に美味しいのです。


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 スケッチした場所は、神社の森がちょうど切れたような場所で、人通りが全くなく、それはそれで落ち着けたのですが、今日のギャラリーは沢山の蚊でした。余りの蚊の多さに、一度その場所を離れて、薬局で季節外れの虫よけスプレーを買って、また元の場所に戻って帽子から足先までスプレーを噴霧してスケッチ再開。しかし、しばらくするとまた彼らがしつこく周りにやってきます。もうこちらの方が、スプレーのにおいで咳き込みそうになりました。もう朝晩ずいぶん涼しくなったのに、いつまでも元気な連中です。という訳で、今日は蚊との戦いの中でのスケッチでした。自然の中で描くのだから、こんな日もあるわけですよね。


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 倉敷を今のように年間555万人もの観光客が訪れる活気のある街にしたのは、大原孫三郎(18801943)だと言っても間違いないでしょう。地方の一事業家であった孫三郎は、倉敷紡績クラボウ)や倉敷レーヨン(クラレ)を一流企業に育て上げ、大原美術館、倉敷中央病院、大原奨農会農業研究所(現岡山大学資源植物研究所)などを設立し、地元に非常に重要な「文化遺産・社会遺産」を残しました。大原美術館は現在でも美術ファンが年間100万人以上訪れる美の殿堂ですし、倉敷中央病院は日本の病院ベスト10にいつもランクインしているすぐれた大病院です。自分の資産をこのような形で惜しみなく社会に還元したことが、その後、地域社会の発展に大きく役立ったわけです。ここのあたりの話は、城山三郎の「わしの眼は十年先が見える―大原孫三郎の生涯」(新潮文庫)を読むとよく分かります。


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ところで、倉敷を訪問するなら、アイビースクエア(旧倉敷紡績工場跡)のホテルか、そのほかのホテルや旅館に一泊して、是非、夜の美観地区の散策、をおすすめします。夜の倉敷は何とも言えず美しい日本の夜の風景です。昼間の人通りが嘘のように静かな町となり、照明のもとに蔵の並びが浮かびあがり、まさに江戸時代にタイムスリップします。「感動」間違いなしです。

 

倉敷は、「蔵の町」の印象が強いのですが、実は水島工業地帯を抱える日本屈指の工業都市でもあります。瀬戸大橋(児島―坂出ルート)の起点となる児島も倉敷市に含まれます。私が前に水彩スケッチで訪れた「三丁目の夕日」のロケ地、玉島、も倉敷市の一部です。