わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『ハルコロ(1)(2)』(石坂 啓漫画、本多勝一原作、菅野 茂監修、岩波現代文庫)

2021年11月19日

 

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今から600年前の北海道。その当時のアイヌの人々の暮らしを漫画に描いたのが本書です。石坂 啓さんの描く漫画は、まさに少女マンガの世界で、人物があまりに美しく描写されすぎていて、私自身はあまり好きではないのですが、読み終わってみるとやはり「漫画のもつ力」を感じました。描かれた絵のお蔭でアイヌの生活が印象深く心に残りました。

 

昔、北海道を車で旅行した時に、アイヌの資料館のある二風谷に行ったことがあります。その時の記憶があまり鮮明ではなかったのですが、本書を読んで、少し思い出しました。本書の監修者である菅野 茂さんはアイヌ民族の人権とアイヌ文化の保存のために力を尽くされ、また本書の原作を書いた本多勝一さんは、世界の多くの地域の社会や歴史を独特の鋭い視点でわれわれに描いて見せてくれた人です。本書は石坂・菅野・本多の3人のチームワークで仕上げられたすぐれたアイヌの社会・歴史・文化紹介の作品と言えます。

 

アイヌ民族は言うまでもなく、日本列島の先住民族です。本州の東北地方、北海道、千島列島、樺太などに住んでいましたが、次第に南から侵攻してきた和人に追われ、明治以降の日本では同化政策が進められ、日本のアイヌ民族は主に北海道の一部に生活するだけになりました(東京にもある程度アイヌの人口があるそうです)。

 

同じ日本人でありながら、先住民として長く抑圧的な状態にさらされた人々がいるということを、この物語を読むことによって知ることができます。歴史的な資料や緻密な時代考証などを踏まえてこのわかりやすい漫画を描いてくれた石坂さんに敬意を表したい気持ちになります。