わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

カマキリ

2020年11月2日

 

夕方、二階のベランダの物干し竿にカマキリがしがみついているのを見つけました。ステンレス製の物干しなので、下手をすると滑って下に落下しそうですが、うまく足で体を支えてじっとしています。もう冬が近いので、命の終わりを迎えているオスかメスなのでしょう。どんな目をしているのかと思って近づきましたが、よく見えません。じっとしているカマキリを小さなスケッチブックにスケッチしました。

 

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メスならどこかに産卵しているかもしれない、と思ってあたりを注意して見ましたが、産卵の形跡はありませんでした。そのまま日が暮れて、寒い夜になり、そして夜が明けました。もう一度窓を開けて見てみると。そのカマキリは物干しにぶら下げていた50個ほどの吊し柿の一つに移動していました。そのままそこで卵を生むならそれでいいや、と思って放置しておきました。

 

それから2,3日たつと、カマキリの姿はもうありませんでした。再度産卵の有無を確かめたのですが、どこにも卵は見当たりません。カマキリはどこかへ移動したのか、地面に落ちたのか、それとも最近朝方に盛んに飛んでくる野鳥に食べられたのか。いずれにしても、昆虫の短い命の終末に立ち会うことができました。

 

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カマキリの絵としては、熊谷守一さんの絵を思い出します。熊谷守一画文集『ひとりたのしむ』(求龍堂)の中に、次のような文章があります。

 

「まえに写生に行ったとき、描く風景が見つからないので、仕方なく、畑のわきの彼岸花を描いていました。横でお百姓さんが、黙って畑を耕していました。

 どこからきたのかわからないが、その彼岸花にかまきりが、大きな鎌を振りながら上がってきた。かまきりも入れてまとめると、そう嫌いじゃない絵ができました。

 するとお百姓さんがそばにきて、絵をのぞき、よくできたねとほめてくれました。 — 95歳 / 1975年」

 

薄草色のカマキリと赤い彼岸花彼岸花の茎はカマキリと同じ薄草色と白。そして茶色の背景。わずか4色で描きあげた絵です。まだカマキリが活発に動いている季節で、昆虫の体に躍動感があります。

 

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熊谷守一画文集『ひとりたのしむ』より かまきり(1965)