わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

「アンナ・カレーニナ」

20133

 

トルストイの「アンナ・カレーニナ」を読みました。文庫本で上・中・下の三冊になっている大作です。通勤のバスの中で読み続けましたが、かなり時間がかかりました。アンナ・カレーニナという美貌の人妻が道ならぬ恋に落ちて、その後破局にいたる話を、ロシアの社会や国土や当時の政治情勢をからめながら非常に誠実に展開させた物語です。やはり「文豪」といわれるにふさわしいトルストイの文章のうまさ、ストーリーの展開の素晴らしさ、そして、トルストイの、読者に対する教育的・宗教的意思が感じられます。アンナが夫と幼い息子を捨てて青年貴族ブロンスキーとともに暮らす生活を選択した結果、やがて世間との孤独な戦いの中で次第に孤独感を深めていく過程がよく描かれています。アンナとは対照的に、リョービンという田舎の素直な青年貴族と、当初ブロンスキーと結ばれるはずだったキティというやはり貴族出身の若くて美しい女性が出会い、紆余曲折を経て結婚し、やがて子供をもうけ、幸せな生活を始めるストーリーが、アンナの悲しい話と絡み合うように展開します。今、映画も制作されているようですので、是非、見てみたいものです。


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私は一度、数年前の夏に仕事でロシアに行ったことがあります。モスクワ近郊の、といっても長距離バスで3時間もかかる町ですが、そこで1週間ほど過ごしました。どこまでも続く大地と森林(タイガ)の中に古い中層アパートが点在し、そのような環境の中で、人々は家族を大事にしながら素朴に暮らしていました。車を移動手段にすることはなく、人々はひたすら歩いていました。自転車は1台も目にしませんでした。買い物や散歩や通勤で、町の中心までの長い長い一本道を歩き続ける人々の姿が印象的でした。子供たちもリンゴの木に登って、リンゴをもいで投げ合ったり、両親と散歩したりと、素朴そのもの。ロシアってこんな国なんだなあ、とよくわかりました。若い女性は身なりは質素ですがどの人もどの人も体がすらっと細くて、田舎なのに美人ばかりでびっくりしました。そんな思い出を頭に浮かべながら、「アンナ・カレーニナ」のアンナ雰囲気の女性を我が家の画集から探して、模写することにしました。選んだのは、ルノアールの「サマリー夫人の肖像」。丁度、モスクワのプーシキン美術館に所蔵されているようです。模写が出来上がってみると、アンナよりもキティに対して私が感じた明るい健康的な雰囲気になっています。「アンナ・カレーニナ」は、人間の生き方を問いかける、印象に残る名作です。


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