水彩の 道具片手に Jリーグ （愛知県名古屋市 瑞穂スタジアム サッカーJ２開幕試合観戦）

２０１７年２月

 

いよいよ今シーズンのサッカーJリーグの開幕です。と言っても、私はサッカーの熱狂的なファンではありません。行きつけの理髪店のご夫婦が熱心な岡山ファジアーノ（J2）のサポーターで、散髪に行くたびにファジアーノの話題となり、次第に影響を受けるようになりました。これまで数年前に一度ファジアーノのホームゲームを観たことがあります。その時の相手はよく憶えていませんが、確か水戸か群馬のどちらかで、１－０でファジが勝ちました。昨年はファジアーノがよく健闘して、リーグ戦終盤には１部リーグJ1への昇格をかけた試合に最後まで残って、あわや昇格かというところまでいきました。普段、大人しくて、もの静かな岡山県民も、この時ばかりは珍しく興奮したようです。連日、NHKのローカル放送でサッカーが取り上げられ、セレッソ大阪とのJ1昇格をかけた最終試合は、珍しく（初めて？）NHK BS放送で全国に生中継されました。しかし、今年のファジアーノは昨年の主要選手が多数退団して、メンバーが大幅に入れ替わっています。

 

理髪店のご夫婦から、「今年は１回ぐらい観に行ってくださいよ」とハッパをかけられたので、今回思い切って名古屋グランパスとの開幕試合を見に行くことにしました。名古屋はJ1の名門でしたが、昨年は成績不振で、今年J2に降格してプレーすることになりました。私の興味は、この名門チームにファジアーノがどのぐらい食いついていけるのか、そしてJ2に降格した名古屋グランパスのファンがやる気をなくしていないのか、という点でした。

 

競技場は名古屋の瑞穂スタジアムです。前日に犬山城をスケッチして気持ちを落ち着かせてから、翌日早めに瑞穂スタジアムへ行きました。午後２時から試合開始なので、まあ朝１１時はちょっと早すぎるけれど、時間があればスタジアムのそばでスケッチでも、と軽い気持ちで出かけました。しかし、行ってみると、「トヨタ」のロゴの入った赤とオレンジのシャツを着た名古屋ファンのとんでもなく長い列。私もあわてて列の最後尾につきました。このファンの列を見て、名古屋のファンはJ2に落ちてもチームを熱烈にサポートしているのがよく分かりました。天候にも恵まれ、小さな子どもを連れた家族連れが目につきます。場内アナウンスによれば、入場券は完売。入場者数は公式発表で18,918人。スタジアムは満席です。私は岡山への帰りの新幹線の時間があるので、終わったらすぐに帰れるようにバックスタンドの出入り口に近い席をとりました。比較的名古屋のサポーターゾーンに近い場所だったので、周りは名古屋のファンばかり。試合開始前に、グランパスの大応援団が自軍の選手を紹介した後、相手チームのファジアーノに「ファジアーノ！ファジアーノ！」と大エールを送ってくれました。これにはさすがに感動しました。

グランパスのファンに囲まれて座っていると、何だか昔、子供の頃にテレビでみた連続時代劇「隠密剣士」を思い出しました。大瀬康一が扮する江戸幕府の公儀隠密が日本各地を旅して世の平和を乱す忍者と戦うというストーリーでした。私はちょうど備前岡山藩の隠密になって尾張名古屋に潜入した気分です。もっとも尾張藩は徳川御三家の筆頭格ですから幕府隠密が潜入する必要のない土地ではありますが。　静かにじっと席に座って周りを観察すると、名古屋ファンとそうでない人がひと目でわかります。多分、私も逆にそういう目で周りからみられていたのかもしれませんね。後でわかったのですが、入場者の１割近くが岡山のサポーターだったようです。岡山からも沢山応援に来たんですね。

 

さあ、試合開始。白いユニフォームのファジアーノの選手の動きがすごくいいです。多分こんな大観衆のいるスタジアムなので、皆張り切っているのでしょう。初めからグランパスのゴールを目がけていいボールが飛びます。多分名古屋のファンの殆どがファジアーノを目にするのは初めてだったでしょう。ファジの選手の予想以上の動きの良さに名古屋のファンもややびっくりの様子でした。しかし、前半終了間際、名古屋のフォワードの選手のボレーシュートが見事にきまり、０－１になりました。これで名古屋のファンはやや落ち着き、後半はゆとりの観戦に見えました。しかし、思いがけないファジの善戦にいらつくファンの声も聞こえます。周りが皆ほとんど名古屋ファンなので、彼らの感情がこちらにすぐに伝わってきます。ファジの選手があわやゴールかと思わせるボールを蹴った時など、会場に悲鳴のようなどよめき。また、グランパスの選手がミスをすると、「あーあ、だめだめ！！」とあちこちから声が飛びます。しかし、後半また名古屋のうまいシュートがあり、結局試合は０－２でファジの負けでした。

 

今回、初めて生で本格的なサッカーの試合を見ました。サッカーは、２時間集中できるので面白いです。グランパスは今年サンフレッチェ広島からJ1歴代２位の得点を挙げている佐藤寿人（さとうひさと）を獲得し、得点力では他を寄せ付けないとの評判です。今季のリーグ戦開始前にグランパスの監督さんは「どんな相手でも５－０で勝って、必ず優勝してJ1に復帰する」と記者会見で述べたそうですが、さてどうなるでしょう。ファジアーノは０－２で破れましたが、この試合、なかなか見ごたえのあるいい試合でした。私にはファジの健闘ぶりが頼もしく思えました。