わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

学生に 声を強めて 話しかけ (ロンドン インペリアルカレッジ Barber教授のシンポジウム)

2015年7月9日

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ロンドンは朝から良い天気です。ホテルの窓から見ると朝日がロンドンの街並みを照らしています。この風景をスケッチに残そうと思い、F6の見開きに下書きを始めました。


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今日はインペリアルカレッジで開かれるBarber教授の記念シンポジウムに出席しました。Barber教授の研究室の卒業生,大学院生,研究員をすべて数えると多分200人ぐらいになると思います。私もその一員に加えてもらっているのですが,名誉なことに今回25人のシンポジウム発表者の一人に選ばれました。多分Barber研究室の唯一の日本人で,わざわざ今回遠く日本から来るというので,気を遣ってくださったのでしょう。お陰でわたしはその20分の講演の準備のために英語の練習やら何やらで、この2ヶ月間かなりの時間を使いました。今日はその緊張の発表の日です。

 

前日から寝不足でしたが,私の場合,寝不足や体調不良の時の方が,うまくやれることが多いのです。朝9時半から始まったシンポジウム。最後のシンポジウムなので,皆,難しい科学の話は少なめにしてBarber教授の思い出などを含めて和やかな雰囲気の話でした。私の出番は午後3時半。練習通り話して,時々ユーモアも入れて何とか20分が過ぎました。イギリス人はユーモアが好きで,何とかして人を笑わせよう笑わせようと努力します。それにならって私もあちこちにユーモアをちりばめた話にしました。しかし,英語が下手なので,ユーモアが分かってもらえたかどうか疑問です。Barber教授は一人の発表が終わると演壇の前に出てきて,その人の貢献をたたえ,必ずハグして感謝の言葉を述べておられました。私の話の時にも途中で何度も話に入ってこられて,そのたびに私をほめて下さり,恐縮しました。「今は退職して水彩画家をめざしています」とお話したところ,「頑張って絵を描き続けなさい。本を出したら必ず自分の所に送ってください」と言っておられました。


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5時半頃に全ての発表が終わり,Barber教授が最後の挨拶をされました。昨日のパーティでは声が弱々しかったのに,今日はいつもの元気な大きな声に戻っておられました。その声を振り絞って,聴衆の若い学生や大学院生に向かって,「何でもあきらめずに挑戦するんだ。夢は必ずかなう!」と力強く話しかけられ,私たちも大変感動しました。最後まで研究に情熱を傾け続けた先生の姿が目の前にあり,これがやはり一流の研究者の姿だなあ,と思いました。

 

インペリアルカレッジは理工系・医学系の大学で,イギリスではケンブリッジ,オクスフォードに次ぎ3番目にランクされる大学です。これまでノーベル賞受賞者を16人も輩出し大学世界ランキングでも世界10位ぐらいにいつも入ります(ちなみに東大は35位前後です)。イギリスだけでなく,ヨーロッパやアジアの金持ちの子弟が沢山行く大学です。私はこんなことを全く知らずに留学したのですが,入ってみて学生さん達がみんな素直で頭がいいのにびっくりしました。そんな彼らも35年経っていろいろな人生を歩んで来たことを今回知りました。科学の世界から脱落した人も沢山います。エリートが必ずしも成功しない。離婚して苦しんでいるひと,伴侶に先立たれて絶望している人。人生の幸せは必ずしも有名大学卒業とか仕事の成功からくるのではない,ということを改めて感じました。


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シンポジウムが終わり、皆で最後にワインを飲みながら2時間ほど談笑しました。インペリアルカレッジのシンボルのクイーンズタワーがよく見える場所で、気軽なしかし最後の乾杯です。Barber先生は、これが最後と意識されているのだろうと思うのですが、私と別れの握手をする時も、「僕はグッド・バイとはいわないよ!」と元気で笑顔で立ち去っていかれました。

 

そして最後まで残った仲間たちと4人で近くのレストランに行って、夕食を食べました。オクスフォード大学出身で歳をとっても美人の先輩アリソンさんが「今日は私がおごるから」と言ってステーキを注文してくれました。分厚いステーキ。こんなの久しぶりだなあ、と感動。しかし、イギリスはひところ狂牛病で牛を全く食べない時がありました。それについて聞いたら、もう今は大丈夫なのだそうです。ちなみに、私は狂牛病騒ぎが起きる前の1980年-81年にロンドンに長期滞在していたので、日本では献血することができません(そういう決まりになっています)。


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夕食を楽しんで、お互いにハグして、「グッド・ラック!(幸運を!)」と言って別れました。もう多分この友だちとはこの先会えないでしょうね。イギリスはさすがに遠いですものね。なんだか寂しいですね。人生、出会いと別れです。