鯖街道 往時をしのぶ 町歩き (福井県上中町熊川宿 水彩スケッチ)
2012年9月
若狭国(福井県)小浜から近江(滋賀県)の朽木(くつき)を経て京の都へ鯖を運んだという鯖街道。その鯖街道の中継地で最も栄えた熊川宿を訪ねました。東舞鶴からJRで小浜を経て上中へ。列車が1時間に1本あるかないかの不便な場所なので、しっかりと事前に時間表を確かめたのですが、やはり電車の運行やバスの連絡で時間のロスがでました。しかし、待ち時間も貴重です。出発地の東舞鶴で早朝1時間電車を待って、ようやく上中についたら熊川経由の今津行きが出たばかりであと1時間の待ち時間。上中駅の駅員さんに近くに瓜割(うりわり)の滝というのがあって、15分で行けますよ、と言われて行ってみようかと歩き出しましたが、残暑が厳しく、少し山に入りそうな場所で、暑くて引き返しました。しかし、もう引き返そうと思ったその時に、何と目の前に野生の大きな鹿が現れました。鹿は私を見つけて急いで山に上がり、こちらをしばらく眺めていましたが、カメラを向けると急いで山の中に消えました。私は、野生の鹿を見るのは生まれて初めてで、その野性味豊かな姿に感激しました。
町の中心部に戻り、スケッチ開始。今日は観光客が少なく、リラックスして絵を描きはじめました。しかし、そのうち、団体の観光客が増え始め、立派なカメラを手にした人たちも次々と車で来はじめました。そして、今日も沢山のギャラリーに声をかけられました。伝統的家屋の修復にきているお兄さんたちも私の絵を見て批評してくれました。うれしいですね。多分写真撮影ツアーで来たのだと思うのですがカメラマンのおじさんの中には、私描いている絵を入れて、ついでに私の横顔も入れて、そして背景の伝統的家屋を狙う、というハイテクを駆使する人がいて、恥ずかしいやら、うれしいやら、何だかスターになった気分です。今日は、日陰で気持ち良くスケッチできました。私がスケッチで座り込んだ場所はある古い御宅の車庫の前でしたが、車を出し入れするおじいさんもやさしい方で、どうぞ好きなだけ描いてください、と言ってくださいました。82歳なのに、腰もきちんと伸ばされて、軽の車を運転されていました。
熊川に3時間滞在し、再びバスで上中へ。そしてまたまた電車が出た後で1時間待ち。駅員さんも苦笑いです。仕方ないので、上中のホームから線路をスケッチ。これが思いのほか気持ちがよく、夕方の涼しい風の中で短時間で仕上げました。いつの間にか駅には下校の高校生が沢山集まり、女子高生が私の方を見て何か話たり、私の周りに寄って来たり。女子高生に寄ってこられるのは悪い気はしないのですが、ホームで絵を描いたりしていたので、どこかの有名人と間違えたようです。「何だか目が似てるよなあ」と女子高生が話す声が聞こえるのですが、こんなおっさんが誰に似ているって言うんでしょうね。帽子も目深にかぶっていたから、頭髪がさみしいのもきっと分からないしね。こんな私も身長179センチ、自分で言うのもなんですが、若い頃は、ほっりとした色白の、それなりの少年ではありましたが。