梨食べて 「今日も 歩きは 無し」と決め (二十世紀ナシ 水彩スケッチ)
2012年8月
今日は午前中から、太陽ぎらぎらの青空にムクムクと入道雲が出て、なにやらひと荒れ来そうな気配です。昨日は全国で雷に打たれた人が何人も出ました。
静物画はゆっくりと落ち着いて描けるので、体力的にはかなり楽です。水の補給や筆の洗いも、近くに水道と流しがあるので問題ありません。しかし、モチーフの選択や配置が難しく、また、風景画と違って自由に時間をかけられる分、どこで絵をおわればよいか分からないところがあります。しかし、何でも練習です。こだわらずに、自分で好きなように構図を決めて、描くことにしています。

私が静物画を描くときに、今一番参考にするのが長谷川潾二郎(りんじろう)の絵です。油絵ですが、静かな画面、時間をかけて作り上げた独特の落ち着いた絵です。長谷川潾二郎画文集の帯に、「現実は精巧に出来た夢である」という潾二郎の言葉が書いてあり、私はこれが気に入っています。「人は生きている間のほんの短い時間を、夢のように過す。自然は見事に精巧に出来ていて、人はそれを描くとき、その夢のような美しさと、自分に与えられた特別の時間の意味に気づかされる」、と潾二郎は言いたかったのではないでしょうか。静物画ではありませんが、飼い猫のタローを描いた「猫」が特に有名です。

「気まぐれ美術館」の著者、洲之内コレクションの洲之内徹が書いた文章を引用します。このくだり、美術ファンにはかなり知られていますね。
「猫」の絵だけは、六年前にもう完成していた。………. すると長谷川さんは、まだ髭がかいてないからお渡しできませんと言った。言われてみると、なるほど髭がない。「では、ちょっと髭をかいてください」と、私は重ねて頼んだ。すると長谷川さんはまたかぶりを横に振って、猫が大人しく坐っていてくれないと描けない、……こういう恰好で寝るのは年に二回、春と秋だけで、だからそれまで待ってくれ、と言うのであった。
