こんな本読んだことありますか? 「たべもの植物記」(能戸忠夫著、山と渓谷社)
2019年7月
一昨日の日曜日に吉備高原で買ってきた大玉のスイカが、あと残り8分の1となりました。まだ梅雨空け前なのにこのスイカの甘さ、美味しさにはびっくりです。家族で食卓でスイカを楽しんでいる時に、「スイカって西瓜と書くんだけど、これってやっぱり中国からきたんだろうか」という話になりました。そんな時に役立つのが、この「たべもの植物記」です。

この本には、季節ごとに美味しい野菜・果物の話がスケッチ入りで紹介されています。著者の能戸(のと)忠夫さんは、「日本植物友の会」に所属されていて、その会が発行する月刊の機関誌「植物の友」に10年にわたって書かれたものをこの本にまとめられました。能戸さんは昭和9年(1934年)北海道生まれ。サラリーマン、中小企業の経営者をしながらアマチュアで植物の研究を続けました。いわば趣味の研究でこのレベルに達するのは大変なことです。特に植物の分類関係では、民間の植物愛好家(大学や研究機関に属さない)の中にそういう優れた人が多いです。
スイカの原産地については諸説がありますが、アフリカ南部のカラハリ砂漠との説が有力だそうです。砂漠では水分の供給源として重宝されました。スイカを漢字で西瓜と書くのは、西域から11世紀に中国に伝わったためで、中国では西瓜(シークゥワ)と名付けられ、それがおそらく16世紀後半から17世紀前半に日本にもたらされて、次第に国内に広まったようです。確かに中国語の「シークゥワ」を日本人が聞いたら「スイカ」になりますね!
いつも食べている野菜や果物が、いったいいつ頃どこから我が国に来たのかは、時々気になります。現在の日本食文化もその起源をたどると意外な場所にいきつくことがあります。野菜や果物を大事な食料として受け入れ栽培してきた先人の苦労を、時には感じるのも大切なことではないでしょうか。私のふるさと山陰の鳥取県はスイカの産地として有名です。特に鳥取県中部の倉吉のスイカはブランド品です。あの有名な二十世紀梨と、このスイカで、倉吉は名をあげています。アフリカの砂漠起源のスイカだけに、鳥取のような砂地の多い土地が栽培に適しているのでしょうか。
