わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

この本、もう読みましたか?! 「九十歳。何がめでたい」 (佐藤愛子著、小学館)

2017年3月8日


イメージ 1

 
私は本をさがす時、ベストセラーになっている本はどちらかというと敬遠したくなるほうです。しかし、この「九十歳。何がめでたい」は本屋さんでつい手にとって買ってしまいました。それは、私自身が現在二人の母親(母92歳と義母88歳)と一緒に住んでいて、日々二人の老人パワーに驚かされ、刺激を受けているせいかもしれません。人生の年代別幸福度を調べると、意外なことに高齢になればなるほど幸福度が増す、というデータがいつか新聞に出ていました。高齢になると体はいろいろガタがくるのでしょうが、実は長く生きた満足度と自信が体中にみなぎっているお年寄りは世の中に多いのではないかと思います。佐藤さんもそんな元気な高齢者のように見えます。

この本、200ページ余りの小ぶりな本で、高齢者の読者が多いことを意識して、活字も大きめです。著者は大正十二年大阪生まれの直木賞(昭和44年)作家。非常に多くの著作があります。現在93歳になられています。その人生は波乱に満ちていたようです。その貴重な経験が多数の著作に生かされているのでしょう。
 
「九十歳。何がめでたい」というこの本のタイトルからすぐに佐藤さんの「気合」と「元気ぶり」が想像できますが、本の中身も90歳の目から見た現代日本社会や現代日本人への痛快な「批判」で溢れています。その著者の飾らないストレートな文章が、とても力強くてユーモアがあって、分かりやすい。90歳でこんな文章がかけるなんて、さすがにプロの作家。すごいですね。
 
最初の文章のタイトルが「こみ上げる憤怒の孤独」。佐藤さんは一体何に怒りをおぼえるのだろう、と気になります。そして次が「来るか?日本人総アホ時代」。わあー、ダイレクトだなあ、とますます引き込まれます。そして次の「老いの夢」では、老化問題についてのエッセイ。年寄りの気持ちがよく分かります。そして本の中盤になると、年寄りらしく「思い出話」。その思い出ばなしに思わずニヤニヤ笑い、そして苦笑い。さすがに90歳まで生きておられると、いろいろな体験がお有りのようです。そして終盤は世間への批判などなど。最後までふふっと笑い続け頬を緩めながら読み終わる本というのも私の場合めずらしいです。今回、世間のうわさ通り、大変面白い本でした。