わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

土木コレクション2015展

2015年9月21日

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久しぶりに「うーん」と唸らされる展示を見ました。岡山市のシティミュージアムで開かれていた「土木コレクション2015展」です。日本土木学会という専門家・研究者の集まりが丁度今岡山で開かれていて、その学会の市民向けの展示があるというのを聞いて出かけてみました。土木というと何となく「土木工事」から来るイメージで、おじさんたちが汗水流して炎天下で懸命に作業して橋や道路を作る姿が頭に浮かびますが、ここでは、その土木工事の基礎になる設計図面や工事施工の実際の様子を写真で記録したものをパネル形式で展示していました。日本各地の貴重な土木遺産、例えば東京駅(これは土木遺産というより建築遺産として有名ですが)や北海道の小樽港築港事業、琵琶湖疏水、長崎の西海橋など沢山の建造物について、分かりやすくしかもていねいに解説されています。私は一つ一つの展示を眺めて、おもわず何度も「すごいなあ!」とため息をついていました。どの建造物も機能的でありながら芸術的なのです。こんな面白い展示は久しぶりです。

 

私たちが大学生の頃は工学の中では「電気」、「機械」、「電子」、「航空」、「造船」、「建築」などが花型で、「土木」は多分一番人気がない分野ではなかったかと思います。今でもひょっとしたら「宇宙工学」、「ロボット工学」、「情報工学」などの陰で地味な分野かもしれません。しかし、この展示をみるとその考えが根底から揺らぎます。やはり「土木」で作るものが非常に公共性が高い上に、担当した設計者や施工者の「気合」と「能力」と「センス」が注入されると、歴史に残るほど雄大な素晴らしい、しかも「芸術的感性が光る」建造物となって後世に残ることがわかります。例えは橋、ダム、港、川などです。つまりこれらは後々までその地の景観を作る大事な建造物になるわけです。自然に手を加えて新しい景観を作っていく、その「人間のすごさ」「ダイナミックさ」、そしてその時ついでに示すちょっとした遊び心(芸術性)を、展示を見ていてしみじみ感じました。

 

地震津波、火山噴火や台風・大雨にさらされる日本では、国土の強靭化のためにこのような「土木」技術は大事な意味をもっています。そして農地を支える治水、鉄道敷設に伴う架橋などの工事、港や河川の改修など実に多くの場面で「土木」の技術が生かされていきます。昔は田畑の開墾から始まって、大古墳の造成や都つくりなども当時の最新の「土木」技術を駆使してやっていたわけです。日本列島に人が住み始めて4万年と言われますが、人間がムラを作って生活を始めた縄文や弥生時代からこれらの土木技術は連綿と受け継がれ、それを基礎に現在の技術が発展してきたわけですね。「土木」、すごいです。ただ大きいだけではない。カーブが美しかったり、コンクリートの表面の細工が素晴らしかったり、勿論全体の構造が何ともいえず優雅だったり。もう脱帽です。歴史的建造物を設計し建築を指導した人々の顔写真がパネルにでていましたが、どの人も自信に満ちてカッコいいです。現代風の言葉で言うと「クール」です。「やったあ、こんなの造った!!見て見て!!」という感じの満足感一杯の表情ですね。


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