わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

瀬戸内の 潮風抜ける 松林 (香川県さぬき市 津田の松原 水彩スケッチ)

201211月 (20118月の風景スケッチより)

 
この水彩スケッチは、初めてバススケッチに参加して描いた私にとって大事なスケッチです。とにかくバススケッチのスタートから緊張していました。他の参加者の皆さんの実力を知らないので、私の絵の力で通用するのか、ただそれだけが不安でした。高松のホテルでまずバイキングの昼食。初参加で知り合いもいないので、一人で黙って緊張して食事。講師の先生が気軽に声をかけてくださり、ややリラックスしました。バスは高松から徳島方面へと向かい、やがて目的地の津田の松原に到着しました。

イメージ 1

イメージ 2


 津田の松原は美しい松原です。瀬戸内海国立公園の一部で、日本の白砂青松100選に選ばれています。まず、他の参加者に遠慮しながら、スケッチの場所を決めました。かつて日本画家の平山郁夫さんがスケッチされた所として記念碑が立っている場所の近くに座って、緊張のスケッチ開始。いつものように、2Bの平たい太い芯のスケッチペンシルで水平線と松と砂浜を大雑把に形取って、次に2B の芯出し鉛筆で強く線描きです。そして、線のラインを残す形で薄く着色。この時、F6スケッチ用紙一枚には風景が収まらず、思い切って見開きで描きました。しかし、どうにも肝心な松林が迫力を欠きます。2時間半ほどのスケッチ時間の三分の二ぐらいが過ぎたところで、ペンケースに偶然入れていた筆ペンを思い出して、半ばやけくそで、これで線描きをやり直しました。松の幹が意外といい調子で描けます。「これだ!」と思って、最後まで筆の勢いで押し通してしまいました。これまで室内で静物や人物を描くことが多かったのですが、その時には時間をかけて鉛筆の線を丁寧に引いていました。しかし、風景画はその時の光と風と空気を描くわけですから、その瞬間瞬間をとらえるスピード感が大事です。その点、筆ペンは動きが滑らかで、勢いよく太く筆を走らせたり、逆に繊細に弱く描いたりが自由に出来ます。つまり、自分のその時の感情を画面にのせ易いのですね。


イメージ 3

イメージ 4



出来上がった絵にはそれなりに満足しました。バスの集合時間が迫り、時間が足らなくて、最後は大急ぎになってしまいましたが、静かな瀬戸内海と松林と、吹き抜ける風が画面に残せたような満足感を味わいました。最後の講評会で講師の方に誉めていただいたのも大変うれしく、よいスタートとなりました。

 

以来、私のスタイルは、筆ペン(青墨ペンテル筆、または水筆に自分ですった墨を入れる)を使って線描きをし、それに着彩するという、あまり水彩画をする人がやらないやり方です。しかも、スケッチブックはラングトン(イギリスDaler-Rowney社製)のF6横綴じの水彩紙を見開きにして、パノラマで描きます。このパノラマ描きは、私もこの津田の松原のスケッチで初めて行ったもので、自分にとって記念碑的な出来事になりました。ただし、小旅行や出張のついでにするスケッチでは、F4のブロック綴じの水彩紙を使っています。そして最後に自分で決めていることが一つ。その現場の光と風と空気を残すために、描いたあとには、絶対に手を加えないこと。絵を描くと、その場所の雰囲気や出会った人たちを決して忘れませんね。その旅の思い出を後で変えたくないからです。

イメージ 5