わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

世界記憶遺産 山本作兵衛 の「原画展」へ行きました

20126

ユネスコ世界記憶遺産、山本作兵衛筑豊炭鉱の絵を見に、福岡県嘉麻(かま)市の織田廣喜美術館の「山本作兵衛 原画展」に出かけました。博多駅から福北ゆたか線(いつの間にか篠栗線がこんな名称で呼ばれていました)の快適な電車で桂川(けいせん)へ。そこからバス15分で嘉麻市役所前下車、徒歩5分で美術館です。嘉麻市は最近市町村合併で出来た市のようです。美術館は立派な建物で、内部もゆとりのある快適な空間です。しかもたった30円の入館料で世界的に評価される山本作兵衛の原画を見ることが出来るのは、すばらしい。入場者は少なく、日曜日の午前中、数人の人が作兵衛の作品に見入っていました。作兵衛さんは66歳から作品を描き始めたとか。館内に展示してある制作中の写真を見ると、旧式の電話機が背景に見える質素な部屋で机の上には硯と数本の筆、そして日本画の顔彩を手にした作兵衛さんが制作している様子が分かります。色は赤、青、黄が基本の単純な色調ですが、墨の線描が生き生きとしています。特に人物の描写が見事。また、それぞれの絵に説明書きが素直な字で丁寧に書かれているのが印象的です。絵に出てくる人物はどの人もなぜか美男美女。男の人物の顔は作兵衛さん自身の顔に似ているように思えます。暗い炭鉱の絵なのに、悲壮感のない明るい色調で描いてあるのがとてもいいです。
そして、この絵を見逃さず、きちんと評価してくれたユネスコはすばらしい。

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常設されている織田廣喜さんの作品も見ました。二科会の理事をされた人でちょうどこの530日に98歳でお亡くなりになったばかりとのことでした。ご冥福を祈ります。作品もよかったのですが、織田さんの若い頃の家族(奥さんと子供)と自分で建てた面白い家とアトリエ、そして制作風景の記録写真が大変興味深く、心惹かれました。このように若い頃から家族に囲まれて絵に打ち込まれ、お幸せだったことでしょう。
 
その後、美しい日本の歩きたくなる道500選に選ばれたJR小竹駅から遠賀川沿いの道を歩きました。6月の晴天の昼間、さすがに暑く、歩いている人も全くいません。4キロほど歩いたところで道も分からなくなりリタイア。その代わり、帰り道に遠賀川の土手にあった休憩所で日差しを避けながら、川とは反対側の山と民家の風景をスケッチしました。時々よい風が通ります。1時間半ほどの間に通りかかった人は1人だけ。「今日は暑かですなあ」と挨拶して行かれました。本当は遠賀川に架かる橋の上から大きな川と美しい河原を描きたかったのですが、炎天下なのでこれは断念しました。初夏の緑あふれる山。雲の無い青い空。手前に薄茶色に見えるのは小麦畑でしょうか。緑ばかりの風景はやはり描きにくいものです。民家も古民家はほとんどなく、最近の建築物ばかりです。このあたりも含めて筑豊地帯は福岡への通勤圏内となり、新興住宅地ばかりが目について、その地方独特の珍しい風景を描きたい者にとっては、やや期待外れです。昔の炭鉱のボタ山や炭住はいったいどこに行ったら見られるのでしょうか。今日は夏の訪れを告げる暑い一日でした。

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