わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『星落ちて、なお』(澤田瞳子著、文藝春秋)

2022年1月2日

 

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幕末から明治にかけて活躍した日本画家の河鍋暁斎(かわなべ・ぎょうさい)。その娘とよの半生記です。父暁斎狩野派の流れをくむ人気浮世絵師。とよは父の後継者にという期待に添えないまま、自分の絵の道を歩みます。とよの腹違いの兄周三郎も暁斎の後を継ぐ自覚はありますが、父を超えられないまま早逝します。その後のとよの生き様を明治・大正の時代背景のもと東京を舞台に淡々と描いた作品です。劇的なドラマ性はありませんが、それほど大昔ではない時代に生きて活躍した画家とその家族の物語は不思議と心に残ります。

 

本書を通して、河鍋暁斎という作家に目を向けることになります。暁斎の作品はNHK日曜美術館」でも紹介され注目されました。ネット上でも多くの作品を見ることができます。「画鬼」、「猥雑戯狂の浮世絵師」などと呼ばれ、その特異な作風は現代でも多くの人々をひきつけています。

 

そして本書のテーマである娘とよの生き様。有名な画家を父に持ったがために感じる画業への葛藤が描かれます。時代は次第に日本画から西洋画へ。そんな流れもあります。江戸・明治・大正の近代史の中での画家の生活も知ることができ、美術ファンには興味深い本です。