わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『大家さんと僕』(矢部太郎著、新潮社)

2021年2月21日

 

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2017年発行で2018年のベストセラーになった本です。ネットの情報によると著者の矢部太郎さんはお笑いタレントで漫画家。吉本興業所属で1977年生まれの現在43歳です。テレビでバラエティ番組をほとんど見ない私としては、はじめて出会う名前でした。お笑いコンビの「カラテカ」のボケ担当だそうですが、残念ながら私にはよくわかりません。

 

矢部さんはタレントをしながら、大家さんの2階に間借り生活をしていました。その大家さんは80代の女性。この二人の出会いと、その後の8年間の「二人暮らし」の中の様々なやりとりが心温まるストーリーとなって展開します。短い漫画なので読みやすく、描かれている状況のなかにすぐに入り込めます。漫画の伝える力はすごい、と改めて感心させられます。

 

矢部さんの絵は素朴さあふれるほのぼのとした絵です。著者のキャラクターを反映しているのでしょう。二人の人物描写が中心で、その描き方はとてもシンプルです。背景もとことん単純化されています。画面は白黒です。このシンプルさが全体にいい効果を生んでいます。

 

大家さんは戦争を体験した世代です。その一人暮らしの大家さんの雰囲気がよく表現されています。また矢部さん自身のナイーブで純朴な性格もよく描かれています。二人の関係と、そこにある人間のやさしさや温かさがとてもうまく描かれた傑作だと思います。矢部さんの出演している番組も見ていたいと思いました。