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パリの下水からコロナウイルス発見 — 下水の検査が早期コロナ警告システムとなる (Coronavirus found in Paris sewage points to early warning system, by Christa Leste-Lasserre, Science/news/2020/04/21 を読んで)

2020年4月24日

 

パリ市全域の下水のサンプルを1ヶ月以上検査してきた研究者が、パリ市内での新型コロナウイルス(COVID-19)が感染拡大している時に、その感染拡大と同じような時間経過で、下水中のCOVID-19の濃度が変化することを発見しました。以前からすでにいくつかの研究グループが下水の中にコロナウイルスが検出できることを報告していましたが、今回の研究では、病院でコロナ患者が増加する前に、すでに市内の下水中のCOVID-19が急増していたことが示されました。このことは、この下水のCOVID-19をモニターするという方法がコロナの感染拡大を警告する安価で簡便な方法となる可能性を示しています。例えば第1波の感染爆発がおさまった後の第2波の感染爆発を、この方法で予見できるかもしれません。

 

なぜ下水がコロナウイルスのリアルタイムの感染爆発の情報を提供できるかというと、下水には患者の大便や小便が含まれているからです。患者の体内から便が出されると、含まれるウイルスはすぐに分解されますが、わずかながらその排泄物中にウイルスが残り、それがPCR検査で検出されます。下水中のCOVID−19濃度が高いと、コロナ患者が多いということになります。研究者は3月5日〜4月7日の間、パリ市内の5地点で週2回のサンプリングを行い、病院での患者や死者が増加し始めた日より数日早くCOVID-19の増加を検出しました。パリでは(家庭や病院の)排泄物がトイレから下水処理場へ行くのに半日から3日かかるようです。どれくらいの量のコロナウイルスを各患者が排泄し、それが下水の中でどのぐらい希釈されるかをコンピュータでモデル化して、実際にどのぐらいの患者がその地域にいるのか、つまり市中感染の程度を推定できるようです。表立った症状のない患者でも、日々コロナウイルスを便の中に排泄するので、このような隠れコロナ患者の数も推定できます。

 

この下水のモニター法は、これまでにも各国で成果をあげていて、イスラエルでは2018年に小児麻痺の流行を医学検査に先んじて示しました。オーストラリアではすでに違法薬物の使用を検出するためにこの下水モニター法を使っていて、今回のCOVID-19検出でも同じシステムを使おうとしています。そうなると、細かい地域ごとにCOVID-19の感染をモニターすることが出来るかもしれません。

 

以上が最近の科学ジャーナルScienceに掲載されたニュースの内容です。この下水モニター法が日本でも実行されれば、もっと簡単に地域ごとのCOVID-19の広がりをモニターできて、その情報をもとに我々も細かい対コロナ戦略を練ることが可能になるかもしれません。ついでにネット上で見た他の記事によると、パリでは噴水の水にセーヌ川の水を使っているらしいのですが、その噴水の水にCOVID-19がわずかに検出されたそうです。セーヌ川にもどこかで下水が流れ込んでいるのでしょうか。この水を道路にまいたりしないようにとパリ市が注意しているようですが、この水を猫が飲んだりして、感染が広がったりしないか心配です(余計な心配かもしれません)。

 

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