わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんなこと知ってますか? 温室効果と地球温暖化

2019年11月10日

 

地球を取り巻く大気中には、いわゆる温室効果ガスが含まれています。その温室効果ガスとは、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、一酸化二窒素 (N2O)、オゾン(03)、フロン・代替フロンガスなどです。このうち一酸化二窒素については聞き慣れないかもしれませんが、窒素肥料や工業活動によって放出されるもので、温室効果ガスの4%を占めます。笑気ガスと呼ばれて全身麻酔や歯科などで麻酔薬として使われます(私も歯科でこの麻酔を体験しました)。大気中に2%含まれる水蒸気も温室効果に関わっています。現在地表の平均温度は14℃ですが、温室効果ガスが全く無ければ地表の温度はマイナス19℃になり、現在より30℃以上も低下すると言われています。したがって、温室効果ガスの存在は地球上生物の生存にとって重要な意味をもちます。この温室効果ガスの二酸化炭素濃度が最近急速に上昇し、地球の温暖化が進んでいます。

 

太陽から地球の表面に到達する放射エネルギーの約半分は可視光です。可視光より波長の短い(エネルギーの大きい)紫外線は地球を取り巻くオゾン層によりほとんどが吸収され、地表には届きません。これにより地上の生物は有害な紫外線から守られています。地球表面に到達した可視光線は、その約半分が地表や大気・雲により反射されたり大気・雲に吸収されたりします。そして残りの半分が地表面に吸収されます。地表の植物などもこの可視光を吸収します。一方、地表からは赤外放射されますが、その大部分が大気・雲に吸収され、またその大部分がふたたび地表に向かって放射されます。赤外放射は熱なので、これによって地表が暖められます。二酸化炭素が増えると、この地表からの赤外放射をはね返す割合が増え、地球の温暖化が起きます。

 

18世紀の半ばにイギリスで始まった産業革命以来今日までの約250年間で世界の平均気温は1℃上がりました。今後、気温上昇を2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えることを目標にしたのがパリ協定で、2020年以降に始まる国際的な枠組みです。アメリカのトランプ大統領はこのパリ協定からの脱退を先日通告しました。現在の世界の二酸化炭素排出のトップは中国(全体の28%)。次がアメリカ(15.5%)。日本は6位(3.5%)です。二酸化炭素を大量に排出している国々が率先して二酸化炭素排出削減にリーダーシップを発揮しなければ、地球の未来は極めて厳しいものになるでしょう。

 

参考資料

 

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今年5月に植えた我が家のアサガオ。11月になってもまだ咲いています。


 

こんなこと知ってますか? 大気中の二酸化炭素濃度

2019年11月7日

 

地球温暖化の原因とされる大気中の二酸化炭素濃度は現在、420ppmです。Ppmは物質の濃度の単位で、parts per million (100万個の中に何個あるか)を示します。420ppmは420/1000,000ということになり、これをよく使う%(百分率)に換算すると0.042%となります。地球上では、最近毎年2〜3ppmの割合で急速に二酸化炭素濃度が増加しています。このまま何も対策をとらないでいると、今世紀末(2100年)には、二酸化炭素濃度は 3ppm/年 x 80年 = 240ppmとなり(1年に3ppmの割合で二酸化炭素の増加し、今後80年続くと仮定する)、これまでの蓄積量である420ppmと足し合わせると、660ppmとなります。IPCC気候変動に関する政府間パネル)の試算では、最悪の場合、2,100年に936ppmになると予想しています。1,000ppmに達する二酸化炭素濃度は、今から7,000万年前の中生代白亜紀(大型爬虫類が地上を闊歩(かっぽ)していた時代)以来の出来事で、そのころ地上にはまだ現れていなかった私達原生人類(ホモ・サピエンス)にとっては未だ経験したことのない領域です。私達は極めて近い将来にその「未経験領域」に踏み込もうとしています。

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Taiz/Zeiger Plant Physiology Fifth editionより改変

 

ではどうしてこんなことになったのか。それは今から270年位前の18世紀半ば、つまり1750年頃、イギリスで産業革命が起こったためでした。ジェームズ・ワットにより実用化された蒸気機関を使って、1830年代にはスティブンソンが蒸気機関車を製作し、マンチェスターリバプール間に鉄道が敷かれて蒸気機関車が走り始めました。それ以来石炭と鉄鋼を中心とする近代工業が発達しました。イギリスの産業革命は、やがてベルギー、フランス、ドイツなどヨーロッパ各国に広がり、アメリカ、ロシアにも波及しました。1868年に明治維新を迎えた日本にもイギリスから約100年遅れて近代工業化の波が来ました。それまではずっと二酸化炭素濃度は270〜280ppmに維持されて、長い間濃度に大きな変化はありませんでした。しかし、この産業革命以来、石炭を、続いて石油をエネルギーに使う工業化が大きく広がり、地球の大気中の二酸化炭素は140〜150ppmも増え、それに伴って、18世紀半ばに比べてこれまでに地上平均気温が1℃上昇しました。

 

思い返せば、私が小学生や中学生だった昭和30年代は、学校の暖房はすべて石炭ストーブでした。当番の生徒が毎朝交代で学校の石炭置き場に暖房用の石炭を取りに行き、教室のストーブに新聞紙で火をつけて石炭をくべて暖房の準備をしました。私が生まれ育った山陰地方では、鉄道を走っていたのはずっと蒸気機関車でした。大学に行くころもまだ蒸気機関車でした。蒸気機関車の煙突から飛んだ火の粉が原因(と言われている)で市域の大部分が燃えた鳥取市の大火も経験しました(1952年4月)。しかし、日本の炭鉱(北海道の石狩炭田や北九州の筑豊炭田など各地にあった)での石炭生産は次々と中止となり、今は石炭の殆どを(オーストラリアなどからの)輸入に頼っています。原油も完全に輸入です。従って日本で稼働している火力発電所は、その燃料である石炭も石油も完全に外国からの輸入に依存しています。

 

さて、地上平均気温はこれから21世紀末にかけて更に大きく増加する見込みです(0.5〜4℃)。たとえ二酸化炭素排出を世界中でゼロにできたとしても、しばらくは二酸化炭素濃度は上がり続けるようです。地球表面温度の上昇は、地球上の各地で異常気象を引き起こします。最近は特に世界中で夏の暑さが厳しくなり、熱中症の死者が増加しています。四季がはっきりしていた日本でも、春と秋が短くなり、今年の台風19号のような巨大台風(スーパータイフーン)が発生し、集中豪雨で川が氾濫し、土砂崩れが頻発しています。

 

大気中の二酸化炭素濃度が増えるとなぜ気温があがるのか。それは二酸化炭素が「温室効果」をもち、地球の熱を逃しにくくするためです(つづく)。

 

参考資料

 

今日のラジオ基礎英語・ラジオ英会話

2019年11月6日

 

今日の基礎1。まずアイスクリーム?の味と風味を表す英単語が出てきました。Chocolate, strawberry, vanilla, caramel, lemon, melon, sesame, green tea, curry, soy sauce, miso, cheese。ラジオを聞きながら、まずこれらの英単語のスペルを間違いなく書けることを確認。この中で、chocolate, vanillaとcaramel はアクセントの位置に要注意です。日本語のチョコレート、バニラ、キャラメルとはアクセントの位置が違います。

 

今日は「短い簡単な指示」の学習です。

Help me!         Write to your grandmother (手紙を書きなさい).  Call me back later (あとで電話して). などなど。

若い時、海外に滞在していて一番困ったのは、電話がかかった時に相手の言っていることがよく聞き取れないことでした(昔は個人の携帯電話は無く、共通の電話機が部屋に一つあるのが普通でした)。部屋の誰かに電話がかかってきて、その人がいない時、私がいつも決まって言っていたのは、“Sorry, he (she) is not here now” の一言だけでした。今思うと、”Please call back later” と、もう一言付け加えればよかったと思います。当時はそんな心のゆとりも英語力もありませんでした。

 

基礎2。You are doing better than before. I am so proud of you.

先生が生徒に、また親が子供に言ってあげるといい褒め言葉です。なるほど。こんな風に言ってもらえると、言われた方は本当に嬉しいですね。「前よりいいよ」が、better than before であることが今日のポイントです。

 

基礎3。使役動詞makeの用法。

He made everyone laugh (彼は皆を笑わせた). Make + 人 + 動詞の原形です。

This medicine will make you feel better (この薬を飲むと気分が良くなるでしょう).

こんな簡単な英語で言いたいことをうまく言える。ラジオ基礎英語はすごい。 Radio Kiso-eigo is so cool!

 

ラジオ英会話。Little とsmall のニュアンスの違い。日本語だとおなじ「小さい」の意味ですが、little には感情がこもり、small は単に小さいという客観的事実を説明するだけとなります。 Bigとlargeの関係も同じ。 Big brother (兄)、little sister (妹)は、兄が必ずしも体が大きいわけではないし、妹も体が小さいわけでもない。Bigとlittleで愛情がこもるわけです。

The earth is no more than a little planet (地球はちっぽけな惑星にすぎない).

Give me a small portion of rice (ライス小はsmall riceとは言わない). I am on a diet,

そして面白かったのは、a little mermaid。「かわいい人魚」という意味で、これを a small mermaid とすると「小型の人魚」となります。リトルマーメイドという名前のパン屋さんがありますが、ちゃんと考えて命名しているのですね。

 

 

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今日のマルちゃん

アヴァロン水彩紙 SMサイズ

エンピツ

シュミンケ固形水彩絵の具

所要時間:2時間

こんな本読んだことありますか?  『日英語表現辞典』(最所フミ編著、ちくま文芸文庫)、 『英語類義語活用辞典』(最所フミ編著、ちくま文芸文庫)

2019年11月5日

 

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今はちょうど読書週間の期間中です(10月27日〜11月9日)。昨日は丸善に行き、以前から気になっていた2冊の本を買いました。『日英語表現辞典』の帯には「1908年生まれの著者の『伝説的辞典』が異例の東大・京大1位」とあり、Twitterへの投稿から緊急復刊した結果、東大生協と京大生協の書籍部で売れ行きNO.1になったことが書かれています。私がこの本を知ったのは、朝日新聞の読書欄の記事でです。この本と、ついでにその隣に重ねて置いてあった『英語類義語活用辞典』も買いました。2冊とも、辞典とはいっても普通の文庫本の表紙ですし、全体にちょっと厚めの文庫本という感じです。

 

やはり気になるのは著者。「どんな人がこの本をつくったんだろう」、と私は初めて出会う著者の場合はいつも著者の紹介欄を真っ先に読みます。最所(さいしょ)フミ。1908年大阪府生まれ。津田英学塾(現津田塾大学)、ミシガン大学卒。NHK朝日新聞社、日本リーダーズ・ダイジェスト社、Japan Times社などに勤務。1990年死去。英語に関する著書多数。80年余りの人生を英語にかけた人のようです。

 

どちらの本も、辞書というより、パラパラと好きなところをめくって拾い読みするのがふさわしい感じの本です。英語の単語の用法を、いろいろな例文をあげながら説明しています。普通の辞書と違って、著者の英語への思い入れが随所に感じられます。意味の似た英単語同士の微妙に異なる用法の違いや言葉のニュアンスの違いを、わかりやすく説明してくれます。収められている言葉の数は多くはありません。しかし、ポイントとなる単語についてかなり詳しい説明があります。『日英語表現辞典』のはしがきの中で、著者は「本辞典はアルファベット順になっている。普通の辞書と似ている点はただそれだけで、その他の点ではすべて独自の方法によるものである。たとえば各語句の解説にかなりのスペースを費やし、しばしばミニ・エッセイの姿を呈している」と書いています。

 

この2冊の本はどこを開いても気軽な感じで読めます。通勤・通学電車の中とか、ちょっとした空き時間に、カバンや本棚から取り出して読めます。多分、英語好きの人や英語好きになりたい人の間でずっと人気を保ちつづけ、それらの多くの人々の支持で復刊されたのでしょう。これらの本はきっとずっと読者のそばにいて、読者の英語のセンスや英語的思考法を磨く助けをするのだろうと思います。私など、今はラジオの基礎英語シリーズとラジオ英会話ぐらいしか日常的に英語に接する時間がありませんが、そのラジオ講座でも言葉のニュアンスの違いについては機会あるごとに講師から説明があります。そんな時に、この2冊の本を開いて、言葉の使い方をもう一度確認すればよいのだと思います。ただ、言葉はどんな言葉でも時代とともに変化します。21世紀に入って約20年。この間にも、「現代英語」の「現代」の部分は刻々と変化し続けていることは、頭のどこかにとめておく必要はあるかもしれません。

 

 

木曜スケッチ会のお知らせ

2019年11月4日

 

岡山・高梁市 吹屋ふるさと村を描く (11月エクストラ)

 

11月16日(土)(第3土曜日) 

木曜スケッチ会を岡山県高梁市成羽町 吹屋ふるさと村で開きます。

10:30頃にJR伯備線 備中高梁駅前に集合してください。

 

8:20JR岡山駅→9:14備中高梁、または9:18JR岡山→10:12備中高梁

備北バス 10:50高梁駅前→11:52吹屋

(帰り)備北バス 15:45吹屋→16:43高梁、16:56JR備中高梁→17:58岡山

 

参加自由・無料。雨天の場合中止します。天候の具合によって高梁市内のスケッチに変更する場合があります。

 

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私の定番グッズ

 

2019年10月29日

 

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今週のお題「私の定番グッズ」。私の毎日に欠かせないアイテム。それが「計画・反省手帳」と「体調記録ノート」です。

 

「計画・反省手帳」は市販のカレンダー手帳を使っています。カレンダー手帳の最初の方にまとめてある毎月のカレンダーページの中央に分割線を1本入れて、その線の左側には月の予定を書き入れます。これはだれでもやっていることでしょう。私が多分ユニークだろうと思っているのは、分割線の右側の欄の使用法です。右の欄の一番トップに10項目ほど自分が日頃から自己管理のために目指している項目の頭文字を入れます。「く」は飲まなければならない薬。高齢者になるとこれがあります。「そ」は家全体の掃除。玄関から台所、トイレまで。「勉」は勉強。私は高校時代に理科の科目が苦手だったので、本屋さんから最新の物理、化学、生物、地学の教科書を買い、時々読んでいます。例えば最も苦手だった物理。斜方投射の項を読むと、最近北朝鮮が打ち上げている打ち上げ角度が急で、高度が高くて、加速度をつけて落ちてくるミサイルは、迎撃はかなり困難だろうと分かります。最近の異常気象や地震の話題は、地学の教科書を読むとよく分かります。その他、世界史や日本史の勉強、そして政治・経済の勉強もこの「勉」に入ります。「読」は読書、「甘」は糖分の管理、「歩」はウオーキング、「筋」は筋トレ、「英」はラジオ講座を中心とした英語の勉強。私は20代、30代に3年程アメリカ、イギリスに留学経験がありますが、いまでもNHKの基礎英語1、2、3とラジオ英会話はよい勉強になります(テキストなしで毎日ノート1ページに聞き取った内容を書いています)。現在は小学校にボランディアで教えに行っているので、小学生にどんな英語を教えたらよいか興味をもっています。あと、趣味の水彩スケッチであちこち出かけた時に、絵を見てくれる外国人と会話するのが楽しみです。「は」はきちんとした歯磨き、「食」は腹7分目を守ったかです。毎日寝る前にこれらの項目がクリアーできれば◯、できなければXをつけませす。すべて◯の日は月に4,5日しかありません。「そ」の掃除は、自分の部屋は猫の子が昼間いつも一緒にいるので(夜は自分の寝場所に帰ります)、寝る前にかならず掃除機をかけますが、家の部屋全体の掃除は週1回です。これがネックになって完全◯の日は多くありません。1年間毎日これを続けています。これで自分の自己管理がうまくいっているとおもいます。

 

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計画・反省手帳

 

「体調管理ノート」は、普通のノートに必要なだけ縦線を引いて、毎日の体調データを書き入れます。体重、体脂肪、筋肉量、骨量、内臓脂肪、基礎代謝、および体水分は毎晩入浴後に体重計に乗ってデータを記録します。毎日歩いた歩数はスマホ歩数計のデータを使います。そして毎朝起床時に(5時)最高血圧最低血圧、脈拍を測り記録します。備考欄は使用している薬(前立腺肥大症を抑える薬)を服用したかの記録と、夜中にトイレに起きた回数を記録しています。高齢者なので、どうしても明け方近くにトイレに行きたくなって目が覚めます。これも自己管理です。

 

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体調管理ノート


 

そして毎年恒例になっているのが人間ドック。もう30年ぐらいほぼ毎年受診しています(70歳を過ぎると、もう毎年の必要はないかもしれません)。胃カメラもこのところ毎年連続受診。大腸がん検査も前立腺ガン検査(生検)も受けました。おかげで、昨年の人間ドックでは医師から、「こんなパーフェクトな人は最近見たことないね」と褒められました(自慢話になってすみません)。幸いまだガンにはなっていません。ちなみに私は若い頃からタバコは吸いませんし(1本も)、アルコールもビールをコップ1杯時々飲む程度です。皆さん、自己管理の成果はとても大きいですよ。私は若い頃から、淡々と規則正しい生活をするのが自分のセールスポイントだと思っていました。

 

ついでに書きますが、かわいい我が家の雄猫マルちゃんの体調管理も同じようにしています。おしっこ(△)とうんこ(◯)の印、と食事の餌の種類と量(グラム数)と、毛玉を吐いた日、シャンプーをした日などを毎日、午前、午後、夜と時間帯を分けてノートに記録します。

 

 

 

美術館を訪ねる旅 — 岡山県立美術館

2019年10月26日

 

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岡山県立美術館で開かれている「熊谷守一 いのちを見つめて」展に行きました。今年は熊谷守一没後42年。熊谷守一の生涯と作品はこれまでいろいろな機会に紹介されてきました。今回、油彩画、水墨画、書、素描など約150点の作品が展示され、熊谷の全体像を知るとてもよい展覧会でした。

 

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初期の若い頃の作品は、やや画面が暗い。うまい絵なのでしょうが、正直、見ていてあまり気分が引き付けられません。当時、子供を次々に失うなどの不幸が続き、画面もそのような作者の感情を反映しているのでしょう。しかし、しばらく絵を中断した後、50歳代半ば60歳近くなって、「モリカズ様式」と呼ばれる単純化した線と形と色彩の絵が生まれ始め、それがやがて70歳代、そして80歳を越えても続き、個性的な作風がしっかりと確立されていったようです。

 

赤を基調とした線。単純ながら特徴を的確にとらえた形の表現。そして、少ない時には2色、多くても5、6色の絵の具で平面的に塗られた画面。バックの色は茶色が多く、これは多分地面の色を表しているのでしょう。画面に落ち着きを与えます。絵に近づいて見ると、筆の跡は丁寧で乱れていません。時に空を象徴すると思われる青や水色がバックに塗られたりします。日頃から対象をしっかり見つめていたのでしょう、単純化した線や形には無駄や余分なものがありません。全体に究極の単純化を施していますが、それが逆に見る者の想像力をかき立てます。

 

色の配置と色合い。そのバランスがまた素晴らしい。晩年に向かって色が明るくなっています。そして画面にみなぎるのが、命あるものへの愛です。花や昆虫や小動物が描く対象ですが、画面には彼らへの愛情が溢れています。こういうところが熊谷守一が一般の人から熱烈に支持される理由でしょう。今日はいい作品を沢山見せてもらい満足しました。私も出来ればこんな風に命尽きるまで好きな絵を描き続けていたい。そんな夢と希望を与えてくれる作品群でした。

 

熊谷守一については多くの本が書かれていますが、「仙人と呼ばれた男 画家・熊谷守一の生涯」(田村祥蔵著、中央公論新社)は、熊谷守一の97年の生涯をていねいにたどった良書です。ご参考までに。

 

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